「2億円の借金を返すために作家になった」 直木賞作家・山本一力が語った凄絶な貧乏暮らし 「受賞した段階でまだ400万円の借金が」

エンタメ

  • ブックマーク

サラ金の金利分を取り返す訴訟については…

 サラ金への返済で困窮している人がいるのは事実なんだろうが、少なくとも俺たち家族はサラ金に救われた。最近は、サラ金の金利分を取り返す訴訟がはやっていて、ラジオのCMでも「払い過ぎた利息分が返ってくる」なんて繰り返しやっているけど、俺はあれだけは賛成できない。だって、困っているときはサラ金さまさまで、返済してから「金返せ」って、そりゃ道理が合わないだろう。

 直木賞を取った後、NHK-FMの「日曜喫茶室」で放送作家のはかま満緒さんに言われた言葉が今でも忘れられないよ。「作家になって借金を作った人は何人もいるけど、借金を返すために作家になったのは、あんたが初めてじゃないか」って。俺も作家稼業がこんなに大変だって知っていたら、物書きの道は選ばなかったかもな。

山本一力
作家。1948年生まれ。高校卒業後、さまざまな職を経て、97年に『蒼龍』でオール読物新人賞を受賞しデビュー。2002年に『あかね空』で直木賞受賞。今年5月、「飛脚シリーズ」の最新刊となる『ひむろ飛脚』を刊行。飾らない人柄で支持を集め、エッセイや人生相談も人気。

週刊新潮 2023年8月17・24日号掲載

特別読物「地獄の淵を這って…私の『借金苦』物語」より

前へ 1 2 3 4 次へ

[4/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。