「障害」「セクシズム」「差別」問題から逃げず、忖度せず… 角田光代が語る、韓国ドラマのすごみ「感動してしまうほどの情熱」

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1日2話までという自分ルール

 韓国映画を数多く観ていた私が韓国ドラマにもハマったきっかけは、コロナ禍で話題になった「愛の不時着」。さきほど数えてみたところ、この3年で34タイトルもの韓国ドラマを観ていました。ついつい観過ぎてしまうので、1日に2話までと決めています。

 韓国ドラマの中では、「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」という作品もすごかった。いじめられた主人公の復讐劇で、勧善懲悪という描き古されたテーマながら、いじめが人から何を奪うのかということをきちんと描いています。いじめっ子のボスが女の子で、その悪役っぷりが本当にすごい。

「私たちのブルース」もいい。済州島を舞台にした群像劇で、登場人物それぞれの「知られざる事情」を丁寧に描いています。

感動してしまうほどの情熱

 ちなみに、私の小説『紙の月』が今年、韓国でドラマになりました。実は数年前から映画化したい、との連絡をいただいていて、キャストが決まったりするたびにメールが来ていました。ところがキャストが何かの事情で出演を断ったとか、監督が替わることになったとか、そういった連絡がずっと続いていて、最終的に映画は難しそうだからドラマにします、と。もう何年にもわたってお一人の方が映像化のために力を尽くして下さって、私としてはもうボツになってもいいよと思っていたんですが……結局、無事にドラマになりました。彼らは本当に作品制作への情熱がすごい。それはもう感動してしまうほどでした。

角田光代(かくたみつよ)
作家。1967(昭和42)年、神奈川県生まれ。魚座。早稲田大学第一文学部卒業。1990(平成2)年「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。1996年『まどろむ夜のUFO』で野間文芸新人賞、2003年『空中庭園』で婦人公論文芸賞、2005年『対岸の彼女』で直木賞、2006年「ロック母」で川端康成文学賞、2007年『八日目の蝉』で中央公論文芸賞、2011年『ツリーハウス』で伊藤整文学賞、2012年『紙の月』で柴田錬三郎賞、『かなたの子』で泉鏡花文学賞、2014年『私のなかの彼女』で河合隼雄物語賞を受賞。著書に『キッドナップ・ツアー』『愛がなんだ』『さがしもの』『くまちゃん』『空の拳』『平凡』『笹の舟で海をわたる』『坂の途中の家』など多数。

週刊新潮 2023年8月17・24日号掲載

特別読物「なぜ溺れるのか 『表現のプロ』が感嘆する『韓流ドラマ』の魅惑力」より

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