大学生の“大麻逮捕”頻発で「合法化しない日本は時代遅れ」は本当か マトリ元部長は「どの国も<大麻の安全性が確認された>から合法化に踏み切ったわけではない」
ここ最近、連日のようにニュースで取り上げられている“問題”がある。端的に言えば、それは「大学生と大麻」に他ならない。
警視庁は8月22日、日本大学アメフト部の寮に対して、異例と言える“再度の”家宅捜索に踏み切った。すでに21歳の部員が大麻取締法違反の疑いで逮捕されているが、別の部員にも大麻などを所持した疑いが持たれる。また、東京農業大学では7月以降、ボクシング部員3人が次々に大麻取締法違反の疑いで逮捕され、朝日大学(岐阜県)ではラグビー部員3人が大麻を密売した容疑で逮捕された。
大人たちが想像している以上に、大麻が若者にとって“身近な存在”になっているのは間違いない。そして、こうした事件が起きるたびに、SNSを中心に以下のような声が飛び交うのもまた事実だ。
<大麻が合法化されない日本は時代遅れ> <大麻くらいで若者の未来を奪うな> <ドイツでも合法化が間近なのに、なぜ日本だけはいまだに“禁止”なのか>
たしかに、アメリカやカナダ、タイ、最近ではドイツでも“大麻合法化”が取り沙汰されている。では、日本は本当に“世界的な合法化の潮流に乗り遅れている”のか。“大麻くらいで若者を逮捕すべきではない”のだろうか。
SNSを通じて易々と薬物を入手する若者たちの実態を明かした『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮新書)の著者である瀬戸晴海氏は、自著のなかでこう断じている。
どの国も、決して<大麻の安全性が確認された>から合法化に踏み切ったわけではない、と。
厚生省麻薬取締官事務所(通称:マトリ)で、捜査の最前線に立っていた瀬戸氏(元関東信越厚生局麻薬取締部部長)の経験から、世界で相次ぐ“大麻合法化”の知られざる背景について理解を深めてもらいたい。
(以下、瀬戸晴海著『スマホで薬物を買う子どもたち』【第7章 緊急提言:大麻合法化は危険である】をもとに再構成したものです。また、記事中で触れているのは2022年5月時点の情報です)
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海外での合法化の流れはどう理解すればいいのか
薬物関連諸条約の加盟国はいずれも大麻を規制しているものの、処罰の詳細については各国の事情に委ねられているのが現状です。ここからは、あくまでも私見になりますが、これらの国や州は<合法化せざるを得ない>状況にあった(ある)のだと考えるべきでしょう。
「合法化」と聞くと、あたかも大麻を自由に使用できるという印象を抱きがちです。しかし、実際のところ、合法化された国々でも多くの場合、大麻の所持や使用については国の管理下で規制がかけられ、未成年者の使用は厳禁。子どもたちへの浸透を予防した措置を採っています。
2018年10月、カナダは嗜好用大麻の合法化に踏み切りました。これはウルグアイに次いで世界で2番目の措置であり、先進国7か国では初の事例です。大麻政策の一大転換点と言えるできごとでした。実は、ニュージーランドでも20年10月に大麻合法化を巡って国民投票が実施されましたが、賛否が拮抗したものの否決されています。
他方、アメリカの連邦法は大麻を規制していますが、州単位では嗜好目的や医療用目的での大麻使用を認めています。20年11月の大統領選と同時にアリゾナ、ニュージャージー、サウスダコタ、モンタナの4州で嗜好用大麻合法化の是非を問う住民投票が行われ、この4州では合法化が可決されました。後にニューヨーク州なども合法化され、全米50州のうち18州と、ワシントンDCで解禁されています(22年5月現在)。
それでは、どうして大麻を合法化するのか、カナダが合法化に至った経緯は次のようになります。
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