夏の甲子園の裏で…「プロ対アマ」「名門大学対地方大学」の熾烈な“選手争奪戦”が起きていた!

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大学や社会人に進む選手が多い

 慶応の2回目の優勝で幕を閉じた夏の甲子園。連覇を狙った仙台育英と107年ぶりの優勝がかかった慶応の対戦ということもあって、平日にもかかわらず決勝戦は前売りチケットが完売となり、大変な盛況ぶりだった。ただ、その一方で、ドラフト候補という意味では、超高校級スラッガーの佐々木麟太郎(花巻東)や真鍋慧(広陵)の活躍はあったものの、“盛り上がりが足りない”という声があったのも事実だ。【西尾典文/野球ライター】

 その理由としては、有力候補の数というよりも、実力はありながらも高校からのプロ入りを希望せずに大学や社会人へ進むことを選択した選手が多かったことが影響している。

 慶応は基本的にそのまま慶応大へ進学することはもちろんだが、仙台育英もエースの高橋煌稀、最速151キロをマークした湯田統真、U18侍ジャパンに選ばれた捕手の尾形樹人は、揃って東京の強豪大学に進学すると言われている。

 初戦で強打の愛工大名電を1失点に抑え込み、大会ナンバーワン投手とされた森煌誠(徳島商)は社会人入りを表明した。さらに、大会前に注目度が高かった平野大地(専大松戸)も調子が上がらず、登板なしに終わり、敗戦後には大学進学を示唆するコメントを出している。

「最近は、高校2年の冬には進路を決めている」

 プロ志望届を提出すれば、ドラフト会議で指名される可能性が高い選手が、大学進学や社会人入りを選択することは決して珍しいことではない。ただ一方で、選手が進路を決めるタイミングが、年々早まっているというのだ。プロ球団のあるスカウトは、以下のように話す。

「高校生であれば、3年の春から夏にかけて進路を決めるということが多いですが、最近はどんどん早くなって、2年の冬には決めているというケースがありますね。特に、下級生の頃から活躍しているような選手は、大学側も声をかけるのが早いです。(プロから見ても)一冬超えたら楽しみだなと思っていた選手が、こちらが本格的に調査する前に、高校の監督から『もう大学が決まったので見に来なくていいですよ』と言われることも珍しくありません。3年生になってから一気に良くなる選手も多いので、もう少し考えてから、(進路を)決めても良いのではないかと思いますけどね」(関東地区スカウト)

 2018年の夏の甲子園準優勝投手、吉田輝星(金足農→日本ハム)も最終的に高校からプロ入りしているが、当初は大学進学予定だったと言われている。ただ、吉田のように方針転換ができるケースばかりではない。それは大学の“格”が影響しているという。

「(スポーツ推薦がない東京大、慶応大を除く)東京六大学や、一部の東都大学に所属する大学は、かなり早めに(選手側に)回答を求めると聞きます。あとはプロ志望届を提出して、指名されなかった場合に入学を認める“プロ待ち”もNGです。だから、このような大学に決まっている選手は、こちらも見切りをつけやすい。逆に気をつけないといけないのは、“プロ待ち”を認めているような大学や社会人の内定をもらっている選手ですね。そういう選手は『大学が決まっています』と言いながら、3年生の夏に活躍して自信をつけて、急遽、プロ志望届を出すことがあります。毎年のように強豪と言われる大学に多くの選手を送り出しているような高校では、学校や指導者同士の関係性から、そういうことも少ないですが、あまり実績のない新興勢力のような高校では、特に注意が必要です」(前出のスカウト)

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