「得意料理はきんぴら。飯を作ることが精神の安定にもつながる」 主演作が途切れない82歳「藤竜也」が語る仕事と人生

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今も昔も、監督と演技については話さない

 藤と三原監督は「村の写真集」(2005)と「しあわせのかおり」(2008)で仕事をしている。

 若い監督の作品に出演することについて、当時の藤はインタビューで「現場では監督が一番偉いと思っているから、年齢は関係ない。だから、巨匠だろうと若い監督だろうと言葉遣いは変えない。そうでないと、現場は成り立たない」と語っていた。今もそのスタンスは変わらない。

「相手の年齢で接し方を変えることは昔からありません。監督に対しても若い俳優さんに対してもすべて敬語。若い方でいい芝居をするなと思う方もたくさんいます。やはり時代と共に文化やメンタリティが変化し、進化しているのでしょう。感心することばかりです」

 若い共演者にとっても、藤の取り組み方や役作りは刺激となるだろう。頑固一徹な写真屋を演じた「村の写真集」では、撮影前に単身で現地入りし、家を間借り して数日間を過ごした。中国出身の名料理人を演じた「しあわせのかおり」では、5カ月半も料理を習い、よそ見をしながらでも包丁を使えるようになった。

 今回の「高野豆腐店の春」では豆腐づくりを学び、ロケハンにも同行した。

「私の場合、役作りはちょっとマニアックなところがありますね。それがどうプラスになるのかは分からない。大抵は大したことないのですが、少しでも演技の足しになればと思っています。前2作と合わせて職人三部作とも言われていますが、職人さんの役は技術の練習ができるから、実はやりやすいんですよ。そんな滅多にないチャンスをいただいたわけですから、ありがたいというのもある」

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