「パワハラしてもOK」「悪口を広めて相手を孤立させる」 韓国ドラマが面白い背景にある「文化」を作家・久間十義が解説

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「甲乙問題」と「離間事」

 例えば韓国では、「甲乙(カプ・ウル)問題」という言葉がよく聞かれます。これは上位者(甲)は下位者(乙)を搾取しても構わないという心根と、そこから生じる不都合のことを言うようです。韓国ドラマにおいて、社長が威張り散らしたり、部下が土下座するシーンがよく出てくる背景には、こうした「文化」があるのでしょう。

 イガンジルという言葉もあります。漢字だと、「離間事」。特定の人物の悪口を広めて、孤立させる、といった意味です。

 テリマンジョは、漢字で表すと「代理満足」。他人に自分の夢などを仮託して、その人を成功させることで満足を得る。それを目的として計略を図る。韓国ドラマにはそういった場面が確かによく出てきます。

「なぜ韓国はこういうことをするのか」が理解できるように

 私は韓国ドラマを通じて、ものすごくいろいろな気付きを得ました。何しろ、それまで韓国という国を全く知りませんでしたから。

 韓国ドラマを数多く観ることにより、日韓関係の外交や政治において、「なぜ韓国はこういうことをするのだろう?」といった疑問が解消されていきました。韓国は、ドラマに出てくる嫌な社長のように、「ああしろ、こうしろ」と日本に要求してきます。それは「甲乙問題」という言葉が示す通りの、向こうの文化だったのか、と……。

久間十義(ひさまじゅうぎ)
作家。1953(昭和28)年、北海道生まれ。早大卒。1987年、「マネーゲーム」で文藝賞佳作入選しデビュー。現実の事件に想を得た問題作を次々と発表し、ポストモダン文学の旗手として注目を集める。1990(平成2)年、『世紀末鯨鯢記』で三島由紀夫賞受賞。『魔の国アンヌピウカ』『オニビシ』等の文芸作品の他、『刑事たちの夏』『ダブルフェイス』『ロンリー・ハート』『笑う執行人 女検事・秋月さやか』等の警察小説・特捜検察ミステリー、『聖(セント)ジェームス病院』『生存確率』『デス・エンジェル』『禁じられたメス』等の医療小説、『狂騒曲』『黄金特急』等の経済小説、『祈りのギブソン』等のサスペンス・ホラーと幅広く活躍している。

週刊新潮 2023年8月17・24日号掲載

特別読物「なぜ溺れるのか 『表現のプロ』が感嘆する『韓流ドラマ』の魅惑力」より

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