「パワハラしてもOK」「悪口を広めて相手を孤立させる」 韓国ドラマが面白い背景にある「文化」を作家・久間十義が解説

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 なぜ人々はこれほどまでに韓国ドラマに吸い寄せられ、時を忘れて没頭するのか――その秘密を、韓国独特の文化という観点から作家・久間十義が解説してくれた。

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 2009年、病気になってしばらく休業していた時に、せっかく時間があるなら、と韓国ドラマをたくさん観るようになりました。最初は、何度目かの再放送をやっていた「冬のソナタ」。体調の悪い時こそ世間で評判のドラマでも観て、「売れる」秘訣(ひけつ)を勉強しよう、といったことを私はぼんやりと考えていました。

 その「冬のソナタ」は予想以上に面白かった。何より出演者たちが美しかった。病気療養中の私の古い脳皮質というか、懐かしい記憶に訴えてくる奇妙な心地よさがありました。

「冬ソナ」では、ヒロインのユジン(チェ・ジウ)が、初恋の人の事故死によるPTSDを病んでいます。彼女を支えようとするサンヒョクとの晴れの婚約式の日、しかし彼女は偶然初恋の人にそっくりなミニョン(ペ・ヨンジュン)を見かけて……というふうに話は進みます。PTSDとしての恋愛と、そこからの治癒を前面に押し出す演出があり、事態は目まぐるしく変転。視聴した方ならお分かりでしょうが、死んだと思っていた人が生きていた? 記憶喪失? また交通事故? 絡まった恋愛感情が落とし所を迎えたかと思ったら、今度は不治の病? なになに、目が見えなくなったって? えーっ、二人はきょうだいだったのぉ? と、こんな展開が息も継がせず続きます。

誰もが劇的対立を生き、容赦がない

 主要な韓国ドラマを観始めた頃、私は「なんでこんなに面白いんだろう? 日本のドラマとどこが違うのだろう」と不思議でした。韓国ドラマでは登場人物の誰もが劇的対立を生きていて、容赦がありません。「ウソも100回つけば真実になる」といったプロパガンダは当たり前。告げ口や盗み聞きは日常茶飯事で、悪口を言って人を仲違いさせたり、上下関係を確認して、上位の者は下位の者にマウンティング。その上、徹底的に搾取します。

 日本の作品と違い、この種の行為があからさまであることが韓国ドラマの特徴です。当初、私はその作劇術に衝撃を受けました。しかし、1年半ほどで有名な作品を観つくした結果、このような劇的対立は韓国の人たちの生き様そのものなのではないか、韓国ドラマはそれを何の衒(てら)いもなく写し取っているだけなのではないか、と思い至りました。

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