やり投げ日本記録・北口榛花が語った「ウエートトレーニングを重視しない理由」(小林信也)

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ベンチプレスはしない

 8月19日に開幕した世界陸上ブダペスト大会では、銅を超えるメダルが期待される。どこに注目して応援すればいいか、北口に聞いた。

「とにかく1本目に集中します。1本目がよくて何回か失投が続くことがあります。でも、もうちょっと力を出したいんだな、遠くに飛ばすために何かやっているんだなと理解して応援してもらえたらうれしいです」

 記録が出なくても、どんな投げ方ならOKなのか。

「体がスムーズに動くのが第一条件。助走が苦手なので、助走の大事なポイントで動きが止まらないこと。下を見ない! 水平方向を見ると体が突っ込んでしまうから、斜め上、なるべく高い投擲方向を見て投げることを心がけています」

 最後に、チェコのコーチを選んだ理由を尋ねた。

「ウエートトレーニングが最優先じゃないからです。サーキットとか階段ダッシュ、坂ダッシュなどが多い。やりのコーチはみんな『パワーが必要だ』と言います。自分にはそれが合わないと思っていました。ウエートをやると体が固まってしまう感覚があったので、高校時代から『試合が近くなったらベンチプレスは絶対しない』と決めていました。日大でも自由にやらせてもらって、私は恵まれていました。いちばん大事なのは技術、しなやかさです」

 7月16日のダイヤモンドリーグ・シレジア大会で今季世界最高、67メートル04の日本新記録で優勝した。

「世界陸上で日本記録を出すつもりだったので、ちょっと早い」、無邪気に笑った北口への期待がいっそうふくらむ。

小林信也(こばやし・のぶや)
1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。

週刊新潮 2023年8月17・24日号掲載

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