やり投げ日本記録・北口榛花が語った「ウエートトレーニングを重視しない理由」(小林信也)
チェコを本拠に世界一を目指すやり投げの北口榛花(JAL)にリモート取材ができた。
「高校(旭川東高)では地域のクラブで競泳をやるつもりでした。でも入学したら、毎日のように陸上部の先輩や同級生に『見るだけでいいから』と誘われて」
練習を見学し、初めてやりを手にした。
「やりを投げた時、ちょっと楽しいかもしれないな、と思った。やりが飛んで行くのが楽しかった。物を投げた経験がないので、バドミントンの振りでしか投げられない。ラケットの面を変えるのに手首の操作をするんです。やりの投げ方がそれと似ていて、最初から苦戦しませんでした」
小学生時代はバドミントンをやっていた。6年生の全国大会で、現世界女王の山口茜と対戦した。
「スーパースターだった茜ちゃんと対戦できて、いい思い出になりました」
中学時代は水泳に打ち込んだ。専門はショートスプリントの自由形。
「高校の顧問の先生に、『水泳と両方できるなら陸上もやります』と言いました。
毎日、水泳と陸上の掛け持ち。土日は朝水泳の練習をして、びしょ濡れのまま陸上に行って練習、それからまた水泳の練習。
担任の先生が心配するほどフラフラで、授業中は起きているのに必死って感じ。水泳は全国大会出場の標準記録が破れなかった。やり投げは1年秋の全国大会で3番になって、合宿にも呼んでもらったので、水泳をやめて陸上に絞りました」
北口が自己分析をする。
「水泳はペース配分が必要。私はそういうのが得意じゃない。だからショート専門。やり投げは一本一本に全力を出し切れる、それが性格に合っていた。私はバドミントンでもいきなりスマッシュを連発するタイプだったので(笑)」
昨年のオレゴン世界陸上では6投目に63メートル27を投げ、銅メダルを取った。やり投げは、「一発があると強い」とも言われるが北口の感覚は違う。
「正直1本でいいとは考えていません。私はパッと投げて必ず63メートル飛ぶわけじゃない。63メートルが決勝に進める、そして決勝で8人に残れる数字だと思いますが、予選と決勝の9本中3本必要。1本では届かない」
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