夏の甲子園優勝 慶応高の実態は「お金持ちの野球エリート」 特待生制度がなく、「3年間300万円超」の“高額学費”で進学を諦める有望選手も
学費を免除する“特待生制度”がない
一方、他の高校から慶応大に野球で入学しようとしても、AO入試の難易度はかなり高くなっている。記憶に新しいのが、高橋宏斗(中京大中京→中日)のケースだ。
当初、高橋は、慶応大のAO入試を受験したものの、不合格となった。プロ志望に切り替えた結果、地元の中日にドラフト1位で指名されている。結果的に、“滑り止め”が中日になった形だ。こうした事情もあって、「野球の実力がある生徒が、慶応大を目指すには、慶応高から入るのが最も入りやすい」というのが野球関係者の間では常識になっている。
ただ、慶応高に進学するには、野球の能力や学力に加えて、乗り越えるべき高いハードルがある。それが学費の問題だ。
慶応大のホームページには、幼稚舎から大学までの学費(※その他の費用を含む)が掲載されている。それを見ると、慶応高は初年度だけで「132万1000円」、3年間通うとなると、掲載された数字を単純計算しても「300万円以上」という高額な学費が必要となる。他の強豪校では、学費を免除する“特待生制度”があるが、慶応高はこのような制度はない。
学費以外にも、野球にかかる諸費用が必要になり、よほど経済的に余裕のある家庭でないと、慶応高への進学は難しいことは間違いないだろう。そのため、学業よりも、経済的事情で進学をあきらめる選手が多いと聞く。
選手同士の競争は厳しい
また、チームのスローガンとなっている“Enjoy Baseball”という言葉が独り歩きして、「練習が緩い」というイメージを持っている方が少なくないようだが、決してそんなことはない。
森林貴彦監督の方針では、トップダウンで押し付けるようなことはないが、選手同士の競争は厳しく、トレーニングをかなり積極的に行っている。決勝戦で敗れた仙台育英の須江航監督は、慶応高について「技術はもちろん、現代の高校野球に必要なフィジカル面でも素晴らしかった」と讃えている。
メディアで話題になった「長髪」や「白い肌」といった目に見える部分とイメージは、慶応高野球部の“本質”とはかけ離れたものである。熱心なスカウティングや入学後の厳しい鍛錬が、今回の優勝を支えていたということは、知っておいてもらいたいところだ。
[3/3ページ]