藤井七冠が王位防衛で夢の八冠へ 「藤井の将棋はなんとうまくできているのか」

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 将棋の王位戦七番勝負(主催:新聞三社連合)の第5局が、8月22〜23日、徳島県徳島市の料亭「渭水苑」で行われ、藤井聡太七冠(21)が95手で挑戦者の佐々木大地七段(28 )に勝利し、通算成績4勝1敗で防衛に成功した。七冠を保持する藤井は、31日から始まる王座戦五番勝負(主催:日本経済新聞社)で永瀬拓矢王座(30)に挑戦し、前人未到の八冠制覇を目指す。【粟野仁雄/ジャーナリスト】

124分の大長考

 藤井は王位戦を振り返り、「序盤からじっくり考える将棋が多くて、その中で自分の足りないところが明確になった。そういう経験をできたことは勉強になった」などと反省を交えて語った。

 これで藤井は王位戦4連覇となり、来年5連覇すれば早くも永世王位の資格を得る。大棋士ですら難しい永世の称号を、わずか22歳で獲得する可能性が出てきた。タイトル戦の成績は17戦全勝。通算タイトル数も17期に更新した。

 先手の藤井は得意の「角換わり」に持ち込もうとしたが、佐々木が「横歩取り」に誘導する。

 佐々木は1日目の封じ手に124分の大長考。ここは「3五歩」として歩で取らせて、空いた「3六」に角を打ち込み王手をするなどの選択肢があった。しかし、2日目の朝、立会人の中村修九段(60)が開封した46手目は「1四角」。少し離れた1筋から藤井の「5八」の玉に狙いを定めた手だった。

 対局後、「この手が一番嫌な手だった」と明かした藤井は「4七銀」と応じたが、数手後の「5六角」が攻守に生きた。

一気に厳しい局面に

 2日日、ABEMAの中継は中村太地八段(35)と勝又清和七段(54)が解説で、中村桃子女流二段(35)と中村真梨花女流四段(36)が聞き手で、3人の中村姓が登場した。さらに、立会人も中村姓。その中村修九段も、思わず「中村祭りですね」と苦笑した。

 中盤から2筋の攻防となり、藤井の77手目「2四歩」に佐々木は96分の長考で「3六銀」とした。このあたりから一挙に終盤に突入する。

 佐々木は何とか2筋から飛車が成り込んで藤井玉に迫り、八段目と九段目から王手をかけていく。佐々木が「2九龍」で王手とすると、中村太地八段は「玉が逃げると藤井さんの『8九』の飛車が龍に当たってしまうことが厳しい。どこかで藤井さんが間違えるかもしれませんが、正確に対応されると佐々木さんが厳しいですね」と見ていた。

 藤井玉がひょいと逃げるだけで、攻めていた佐々木の龍に藤井の九段目の飛車が当たり、これを何とかしなくなくてはならなくなる。藤井の将棋はなんとうまくできているのかと感心してしまう。

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