【韓国ドラマ】配信で見られる“重量級ホラー”4選 「正体不明の黒いマッチョな巨人が……」

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 いまやすっかり世界的に人気のコンテンツとなった韓国ドラマ。かつては「韓国ドラマ=恋愛とイケメン」というステレオタイプで語られていたが、最近では「社会派」という見方も定着しているかもしれない。ところがどっこい、韓国ドラマをひとつやふたつのジャンルでくくることは、まったくもってできない。無数のジャンルの集合体なのである。今回ご紹介するのは、夏にもってこいの背筋凍るホラーである。一時は「ゾンビもの」(とそれに類するもの)が量産され、「韓国ホラー=ゾンビ」という印象を持っている人もいると思うが、今回はもっと豊かな、もっとおどろおどろしい、様々な切り口のホラーをご紹介したい。【ライター・渥美志保】

「オカルト」プラス「宗教」

 まず注目したいのは、ディズニープラスで6月から配信が始まったドラマ「悪鬼」だ。

 個人的な感覚としては、韓国ホラーで最も多いのは「オカルト系」ではないかと思う。この作品はそこにもうひとつのホラー的要素「宗教」――土俗的なシャーマニズムが絡む。

 父の死をきっかけに、最強の「悪鬼(悪霊)」に取りつかれてしまった主人公サニョンと霊が見える民俗学者ヘサンが、その正体に迫るというストーリーである。ドラマの面白さ(怖さ)は、その「悪鬼」の謎を民俗学的かつオカルト的に分解していくことだ。

 サニョンの父が残したメモに書かれた古い地名、遺体を木に吊す子どもの埋葬の習慣、不浄を遠ざける左捻じりの「禁縄(きんじょう)」、餓死した子どもを使い飢饉を祓う呪術「厭魅(えんび)」、75年前にかくれんぼの最中に祈祷師と消えた幼い少女……。人間の果てしない欲望が生み出した忌まわしい過去にたどり着く流れは、『犬神家の一族』や『八つ墓村』など、横溝正史の小説の世界を思わせる。

 時に悪霊に意識を乗っ取られるサニョンの二面性を見事に演じるキム・テリ(33、映画「お嬢さん」)はもとより、ドラマ「サイコだけど大丈夫」でその天才俳優ぶりを見せつけたオ・ジョンセ(46)、ふたりと行動を共にする刑事役のホン・ギョン(27)など、韓国きっての演技派が並ぶ。

 実は、ドラマのオープニングのアニメがめちゃめちゃ怖く、これを見ただけでホラー好きはゾクゾクするに違いない。

“事件モノ”から更なる展開に

「連続猟奇殺人」は韓国ドラマでよく取り上げられるテーマだが、「マウス~ある殺人者の系譜~」(U-NEXT、アマゾンプライムビデオで配信中)は、ここ数年で最も話題になった殺人鬼ホラーといっていい。

 25年前、被害者の頭部を持ち去る「ヘッドハンター連続殺人事件」で両親を殺されたムチ(イ・ヒジュン(44)、映画「KCIA 南山の部長たち」)は、犯人ハン・ソジュンに対する殺意を抱きながら刑事になった。そして、ひょんなことから知り合った善良な警官バルム(イ・スンギ(36)、ドラマ「Vagabond/バガボンド」)とともに、新たに現れた連続殺人犯を追う。やがて重要容疑者として浮かび上がったのは、ハン・ソジュンの息子でエリート医師のヨハン(クォン・シヒョン(36))だった。

 前半は「型破り」のムチと「クソまじめ」なバルムのコンビが、続発する凄惨な劇場型の殺人事件を追うスピード感たっぷりの展開だ。だが中盤の「ある事件」以降、物語は観客が全く想定しない方向に転がってゆき、最終的には25年前の事件にたどり着く。そしてタイトルの「マウス」という言葉の意味が忌まわしく浮かび上がってゆくのだ。

 2017年放送のドラマ「ボイス~112の奇跡~」というサスペンススリラーが、その凄惨な描写で話題となったのだが、この作品はその上を行く作品といっていいかもしれない。「殺人者を作るのは生まれ持った遺伝子か? 環境か?」というテーマも見え隠れする。

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