「『愛の不時着』はもはや源氏物語の域」 歌人・俵万智が「影響を受けて作った短歌」を披露
もはや古典
これまでに数多くの韓国ドラマを観てきましたが、やはり「愛の不時着」は完成度が高く完璧だなと思います。もはや古典、「源氏物語」の域に達している。このドラマに影響され、井上荒野さんは小説『僕の女を探しているんだ』を書かれましたし、私も短歌をいくつも作りました。創作をしている人々に多くの影響を与えている、という点で古典といえると思います。
話の骨組みは、「ロミオとジュリエット」と同じ。しかし、古典的なところだけではなく、今風の展開や描写が入っていて、引き込まれます。
恋愛ものの醍醐味であるメインカップルの変化も見どころです。ただ美男美女がくっつくという話ではなくて、出会いと恋愛により、二人の人生も大きく変わっていきます。私の周囲のファンの間でかなり話し合ったのは、いったい二人はいつ結ばれ、男女の仲になったのか、ということです。私は、リ・ジョンヒョクが韓国にやってきた初日を推しているのですが、「いや、最終話のスイスでようやくだ」という人もいれば、「そもそも最初の北朝鮮では」なんて考察もあります。
ダンに捧げる歌
そしてメインの二人が太陽だとしたら、月のように描かれる、北朝鮮人のソ・ダンと詐欺師であるク・スンジュン、このカップルも良い味を出しています。太陽と月、どちらのカップルも片方が危篤状態に陥ります。結果、ユン・セリは生きて、ク・スンジュンは亡くなります。それは逆の可能性もあったことでしょう。ダンとク・スンジュンの悲劇によって、ユン・セリとリ・ジョンヒョクの太陽としての輝きが増すのです。ダンにはこの歌を捧げます。
いのちとはこころが感じるものだからいつでも会えるあなたに会える