中国「恒大集団」トップに持ち上がった“重大疑惑” 「妻と偽装離婚して資産隠し」報道の裏にある意外な真相
8月17日に米連邦破産法の適用を申請した中国の不動産大手「恒大集団」をめぐる“新疑惑”の浮上で、中国国内はいま「大騒ぎ」になっているという。その内容は同社創業者で会長の許家印氏が妻と“偽装離婚”して「資産保全」に走った――というものだが、その真相とは。
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破産法申請に先立つ8月14日、恒大集団が香港証券取引所へ提出した文書が波紋を広げている。中国事情に詳しいインフィニティのチーフエコノミスト・田代秀敏氏が解説する。
「恒大集団の香港市場での上場株式はすでに昨年3月、取引停止になっています。しかし現在も上場企業であることに変わりはないため、株式移動(持ち分変更)に関する報告書を14日に提出した。そのなかで許氏の妻である丁玉梅氏について〈当社及びその関係者から独立した第三者〉と明記され、呼称もこれまでの“丁太太(丁夫人)”から、配偶者などではないことを意味する〈丁玉梅女士〉との一般呼称へ変わっていたのです」
恒大集団が7月に発表した「2021中期報告」によると、丁氏は恒大の大株主であるほか、傘下のEV(電気自動車)メーカー・恒大新能源汽車集団の株も約3.5%保有している。
「報告書内では、新能源汽車の株を4.24%保有する許氏が〈非公開株主〉に分類されたのに対し、丁玉梅は〈公開株主〉とされ、つまりは“一般人”と位置付けられた。これを見た中国や香港の市場関係者らは“許氏は技術性離婚(偽装離婚)して丁氏の資産を保全する行動に出たのではないか。恒大の債務問題は最終処理に向けカウントダウンが始まった”と大騒ぎになりました」(田代氏)
カネがなく「夏でもコート」
許氏の「偽装離婚」疑惑は中国国内のSNSなどでも瞬く間に“ビッグニュース”として駆けめぐり、大きな話題を集めているという。というのも、「立志伝中の人物」として知られる許氏とともに、丁氏もまた「糟糠の妻」として国民の間では広く知られた存在のためだ。
「1982年、大学を卒業したばかりの許氏は河南省にある鉄鋼工場に勤務していましたが、家が貧しかったため着る服がなく、夏でもレインコートを着ていたといいます。当時、その工場で出納係を務めていた丁玉梅はそんな許氏を見かねて“よろしければ5元貸します。シャツを買ってください”と声をかけた。許氏は顔を赤らめながらも5元を受け取り、衣服代に充て、その月の給料日に丁玉梅に5元を返したそうです」(田代氏)
以来、2人の距離は急速に縮まり、恋愛へと発展し、ついに結婚――。この許夫妻の馴れ初めのエピソードは、中国人なら知らぬ者はいないと言われるほど有名とされる。
「もともと丁玉梅は非常に控えめな性格で、夫が事業を拡大して成功への階段を駆け上がっていくなか、みずから表に出ることなく“陰の女”として夫を支え続けた。実際、ブランド品で着飾ることもない丁玉梅はどちらかというと地味な印象で、庶民からの人気も高かった」(田代氏)
しかし意外にも、今回の疑惑に対して中国国内で擁護する声は少ないという。なぜなのか。
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