優勝マジック点灯の岡田阪神 “矢野遺産”が終盤戦の切り札になるか

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キレた指揮官

 優勝マジック・ナンバーを点灯させた岡田阪神。終盤戦の切り札は前任監督の「矢野遺産」だ――。

 8月18日のDeNA戦(横浜スタジアム)で、岡田彰布監督(65)がキレた。1点を追う9回表、一塁ランナーの熊谷敬宥(27)が二塁盗塁を仕掛けた。リプレー検証後、「盗塁死」がコールされると、岡田監督がベンチを飛び出した。二塁ベースカバーに入ったDeNA遊撃手の京田陽太(29)が完全に走路を塞いでいた。キャッチャーからの送球がワンバウンドとなったせいもある。故意ではなかったが、岡田監督の抗議は5分以上続いた。

「もう喋ることないわ、ええよ!」

 惜敗後、岡田監督はそう吐き捨てて球場を後にした。

「優勝が見えてきて、経験豊富な指揮官とはいえ、冷静ではいられない部分もあると思います。岡田監督は感情が顔に出てしまうタイプでもあり、納得のいかないジャッジに爆発してしまったんでしょう」(ベテラン記者)

 18年ぶりの「アレ」に向けた“産みの苦しさ”だろう。昨今、トラ番記者たちは岡田監督の発言にビックリさせられることも少なくないという。その一例が「キャッチャー問題」だ。

「梅野隆太郎(32)の故障離脱以降、坂本誠志郎(29)がスタメンマスクを任されていますが、評判は良いようですね。各スポーツメディアで捕手出身のプロ野球解説者が坂本の配球や、投球間の仕種にも意味があったと称賛していました」(前出・同)

 正捕手・梅野がデッドボールで病院直行となったのは、8月13日の東京ヤクルト戦だった。衝撃的だったのは、試合後の岡田監督のコメント。梅野の状態を聞かれ、

「きついみたいやな。ベンチ下がったとき、『こら、骨折やな』って。今年は無理でしょう」

 と、「詳細」を明かしたのである。近本光司(28)が巨人戦で死球を食らった7月2日の時は、「(容態は)よう分からん」とはぐらかしたのに、だ。近本自身が痛みを隠していたせいもあるが、一軍登録を抹消した2日後も「(抹消は)しゃあない。(復帰は)知らん」と、詳しい内容は話そうとしなかった。

捕手は1人か複数か……

 近年、プロ野球チームは選手の故障について聞かれても、「コンディション不良」などの表現で詳細を伏せている。ファンには申し訳ないが、対戦チームに戦力状況を教えるのも同然で、岡田監督の梅野に関するコメントは「時流に逆行するもの」だった。

「試合中、梅野は病院に直行しました。試合終了前に『左尺骨骨折』の連絡を受けていたのかもしれません。球団は岡田監督が『今季中の復帰は無理そう』とコメントしたのを受けて、骨折の発表をしました」(在阪メディア関係者)

 第2捕手の坂本がいたから、詳細を明かしたのか。それとも、優勝マジックのナンバー点灯を目前に控えていた余裕がそう言わせたのかは不明だが、昨秋の監督就任時で明かしたチーム構想論が思い出される。

「岡田監督は一人の捕手でシーズンを乗り切ることを理想としています。休養を兼ねて第2捕手を使う日もあるでしょうが、就任直後、『正捕手は梅野』と言い切っています」(前出・同)

 前任監督の矢野燿大氏(54)は複数の捕手を併用していた。21年シーズン後半では、坂本がスタメンマスクを任される試合のほうが多かった。どちらもハイレベルなキャッチャーで投手陣からの信頼も厚い。捕球技術、盗塁阻止率はやや梅野のほうが上とされ、相違点を挙げるならば、「梅野は投手のいちばん良いボールを軸に配球を組み立てる」という。そのため、「投手の調子が悪いときは配球がワンパターン化し、見破られたときは歯止めが利かなくなる」とも言われてきた。とはいっても、坂本がバツグンの配球センスを持っていたわけでもない。「捕球技術、肩の強さ、配球センスの全てにおいて平均点、可もなく不可もなく」というのが坂本の評価である。

「今季は平田勝男ヘッドコーチ(64)らの進言もあって、村上頌樹(25)、大竹耕太郎(28)ら一部の投手が先発する日は、坂本がスタメンマスクをかぶることになりました。青柳晃洋(29)、西勇輝(32)が勝てない時期がペナントレース中盤まで続いたため、『彼らのパートナーを坂本に代えたら?』の意見も出たんですが、岡田監督は聞き入れませんでした。パートナーを代えて勝ったら、代えられたほうのキャッチャーを潰してしまうからです」(チーム関係者)

 岡田監督が「正捕手を決めて、その1人で乗り切りたい」とするのは、捕手が日替わりだと守備のリズムが代わり、また、同一カードで前日の対戦で得たデータが活かされないからだと言う。

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