「与党議員が“カジノに連れて行け”と怒り出し、負けると借金まで…」 国会議員の“外遊バカンス”の実態とは? 「外務省のおもてなしルール」には“抜け穴”が
「“カジノに連れて行け”と言いだし…」
国民からの非難が噴出した、自民党女性局長(21日に辞表を提出)の松川るい参院議員が今井絵理子参院議員らと出かけたフランスのパリ視察。今年1月、岸田文雄総理の長男・翔太郎氏が父の欧州・北米5カ国訪問に同行して観光名所を巡っていた問題も。なぜ“税金泥棒”が公然と認められているのか――その答えは2019年に策定された“抜け道”にあった。
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もはや永田町の夏の風物詩ともいえる国会議員の海外視察。元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏は、外務省が議員らに対して行うアテンド、すなわち「便宜供与」の実態についてこう明かす。
「私が便宜供与をしたうち、国会議員で一人だけ例外的にとてもひどい人がいました。細川護熙政権の時のことで、当時の新生党所属のある議員が“モスクワにカジノがあるなんて聞いてなかった。そういう一番重要なことを外務省はどうして説明しないのか”と怒り始め、カジノに連れて行けと言い出したのです」
やむなく佐藤氏は、議員をご希望先へ連れて行ったが、
「その議員は賭けに負け続けまして、やがて“金が足りない”と言うわけです。さらに“大使館は貸し付けはしているのか”などと聞いてくる。あまりにうるさいので大使館の総括参事官に相談したところ“裏金がある。そこから3千ドル貸そう”ということになりました。その後、金は返ってきましたが、これは思い出の中でも一番ひどいものですね」
“抜け穴”的な規定
むろんさすがにこれは前世紀の話であり、今回のフランス視察はここまで悪質なわけではない。が、しかし、それでもなお今回の“外遊という名のバカンス”への国民の反発が強いのはご存知の通りである。
「こうした件が容認されないのは感情論としても当然のことといえますが、実はそれ以上の問題が横たわっているんです」
そう語るのは、さる政府関係者である。
「2019年4月、当時外相だった河野太郎氏が、議員の外遊における“新ルール”を策定しました。それはあくまで外見上は、公と私を今後きっちり区別する、と厳格化をアピールする形になっています」
河野大臣名義で作成された政府の内部文書の中には、「公的用務で外国を訪問する場合でも、休日等に私的目的で地方や市内の観光地の視察を行う場合には、公用車の配車や館員による同行は、原則として実施できません」とある。これに従うならば、在外公館は、やって来た議員の私的行動には便宜を図らなくても構わない、ということになるが、あくまでもそれは建前。実は河野大臣時代に、新ルールと共に“抜け道”も設定されていたようなのだ。
「これにあわせて衆参両院の事務局あてに、外務省の官房総務課が作成した文書があります。実はそちらにこそ、現状の問題を解くカギが隠されている。『国会議員の公務による外国訪問に対する便宜供与に係るガイドライン』という、河野外相が策定したものと区別がつきにくい代物ですが、そこには公私混同を今後も認めるかのごとき“抜け穴”的な規定が連綿と記されているのです」
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