都合の悪い経済指標は公表停止に…その先にある中国政府が絶対に隠したいコト

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デフレ化懸念の払拭にも躍起の中国政府

 中国では情報が比較的オープンだった経済の分野でもタブーが増えており、若年失業率とともに「腫れ物扱い」されているのは「中国経済のデフレ化」だ。

 中国の7月の消費者物価指数(CPI)は前年に比べて0.3%下落した。新型コロナのパンデミックの影響があった時期を除けば、2009年10月以来のマイナスとなった。住宅需要の急速な冷え込みなどから7月の卸売物価指数(PPI)も10カ月連続でマイナスとなっており、中国経済がデフレ化しているのはたしかだ。

 不動産バブル崩壊後の1990年代以降の日本が示すとおり、デフレ化は経済にとって「死に至る病」と言っても過言ではない。

 中国政府は「経済はデフレ化していない」と懸念の払拭に躍起だ。「物言えば唇寒し」ではないが、中国人アナリストがデフレについて公に語ることは御法度になっている(8月8日付ブルームバーグ)。

 中国政府が公表している住宅価格についても、その信憑性が問題になりつつある。中古住宅価格を例にとると、政府のデータでは2021年8月の高値から6%の下落にとどまっているが、民間の調査では上海や深圳など主要大都市圏の一等地などで少なくとも15%下落しているという(8月17日付ブルームバーグ)。

 不動産企業の記録的なデフォルト(債務不履行)にもかかわらず、「中国の住宅市場は比較的に堅調にしている」という見解を示す中国政府に対し、「市場の状況を正確に把握していないのではないか」との不信感が生じている。

中国政府が本当に隠蔽したい問題とは?

 地方政府の債務や今夏の豪雨被害も、中国政府が触れられたくない話題だろう。

 若年失業率の例のように、中国政府がこれらのデータを今後公表しなくなる可能性は排除できないのではないだろうか。国民に対する説明責任の意識が乏しい中国政府にとって、自らの失策があからさまになる情報公開など「百害あって一利なし」だからだ。

 筆者は「中国政府が隠蔽したいのは人口減少の問題だ」と考えている。

 中国大陸の総人口(昨年末時点・外国人を含まず)は14億1175万人と、前年より85万人減少した。減少は61年ぶりだ。昨年の出生数は前年比106万人減の956万人で、建国(1949年)から初めて1000万人を割り込んだ。今年は700~800万人という予測もある。

 人口の多さを国力の源泉とみなしてきた中国政府にとって、「人口減少の加速」という事実は最大のタブーだ。最も基本的な経済データである人口統計が発表されなくなるのは、時間の問題かもしれない。

 だが、都合の悪い情報から目を背けず、身を切る改革を断行しなければ状況が悪化するのは、過去の歴史が教えるところだ。過去の権威主義国家と同様、中国政府は不作為の罪により、建国以降最悪の経済不況を招いてしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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