「あなたってけっこう偽善者なのね…」 44歳夫は浮気相手から指摘されて、それまでの価値観がなぜ簡単に壊されたのか
前編【小学校時代の壮絶イジメが原因で 「穏やかな暮らし」を求めた44歳男性の変心 「彼女の夫は自分のはず」 と思ってしまった瞬間 【不倫の恋で苦しむ男たち】】からのつづき
遠藤智士さん(44歳・仮名=以下同)は、小学校時代にいじめにあって以来、他人の「悪意」を意識する癖が身についたという。両親の離婚もあり「穏やかな暮らし」を求めていた彼は、大学時代からの知り合いだった朝美さんと卒業後に結婚。彼女の実家で、義両親と暮らす生活をはじめた。
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結婚してからわかったことがあった。朝美さんには、3歳違いの兄がいたのだが、彼女が4歳のころ交通事故で亡くなっていた。
「信号無視の車に飛ばされた。うろ覚えなんだけど、私を庇って兄が車の下敷きになったような気がする。両親はそうじゃないと言うものの、私は自分の記憶が正しいと思う」
朝美さんがそう言った日のことを智士さんは今も忘れない。あのときの朝美さんの苦しそうな表情が彼の心に刻まれている。
「僕のいじめもそうですけど、やはり人は常に心に残った傷を抱えながら生きていくんだなと思いました。いじめのことは朝美には話していません。彼女の話を聞いてから、オレだってこんな傷があるよと見せるのは趣味じゃないから」
今とこれからを見て生きていこうと彼は言った。朝美さんも笑顔で頷いた。30歳で結婚し、ふたりの女の子に恵まれた。朝美さんの両親とは、週末は食事をともにすることもあったし、義父とふたりで飲みに行くこともあった。
「義父は大手企業の役員でした。代々、名家だったようで、親戚には医師や学者が多いんです。でも義父はそれをひけらかすことはありませんでした」
義母に疲弊する妻
ただ、義母は少し違っていた。義母の実家はさらに名のある家だったようで、何かというと「私が生まれ育った家では」というのが口癖だった。朝美さんは「没落貴族の家系らしいのよ」と小声で言って笑っていたこともある。プライドが高く、気に染まないことがあると金切り声を出すこともあった。
「娘たちに乳母をつけると言いだして、朝美が『必要ない』と怒っていたこともありました。朝美は自立心が強いから、産休と育休を経て職場復帰したんですが、義母はそれも気に入らなかったみたい。『あなたにもう少し稼ぎがあれば、娘は働かなくてすむのに』とささやかれたことがありました。朝美が働くのは、給料のためだけではないと思いますよと言ったら、義母は聞く耳を持たず、『妻を働かせてどう思ってるの?』と言われた。ふがいなくてすみませんと言っておきました。あとからそれを知った朝美が、母親に楯突いていましたが、ああいうお母さんを変えることはできないから、受け流そうと言ったことがあります」
娘たちの教育に関しても、義母は口うるさかった。あんまりうるさいことを言うなら出ていくからと朝美さんが脅したこともある。愛情過多なのか、朝美さんへの執着なのか、高いプライドのための不満なのか、智士さんははかりかねたが、朝美さんの心が疲弊していくのがわかってせつなかった。
「何度か、家を出るならそれでもいいよと言ったことがあります。ただ、朝美も楯突きながら母親と離れることは考えていなかったんだと思う。ちょっと共依存的なところがありましたね。でも朝美と僕との関係は悪くなかった」
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