フマキラー「虫博士」が明かす“最も蚊に刺されない対策”…殺虫剤CMの知られざる苦悩とは
なぜ嫌われるのか
一方で、虫よけスプレーの効果はどうか。
「はい、大事なのはそこです。蚊の対策で一番効果があるのは、虫よけスプレーのような人体の忌避剤なんですね。塗った場所は100%刺されなくなります。蚊の多い海外の国に行くと、忌避剤をたくさん体に塗ってから寝るんですよ。日本人がそこまでやらないのは、蚊に刺されても“かゆくなるだけだから”です。外国では蚊が媒介する病原体で病気になり、下手すればマラリアやデング熱、黄熱で命を落とす危険性もありますからね。タイに旅行した人から話を聞くと、2月や3月でも蚊が飛んでいたそうです。熱帯だとほぼ一年中いますから、それだけ蚊は脅威なのです」
さて、蚊はもちろんのこと、夏には他にも多くの害虫が登場する。なかでも、圧倒的に嫌われているのはゴキブリだろう。理由として多いのは「形状が苦手」「動きが速い」「突然現れて仰天する」といったところか。それにしても、なぜここまで嫌われるのか。形状に関しては、遠くからなら、クワガタのメスと見分けがつかない気もするが……。佐々木さんはこう語る。
「やはり動きが速いからでしょうね。何しろ秒速2メートルです。クワガタとかカブトムシがそんなに気持ち悪いと思われない理由は、大きさに対して適度なスピードしか出ないからなのでは。同様の理由で嫌われているのは、フナムシとゲジですね」
触るとダンゴムシのようにまるくなるゴキブリも
たしかに、クワガタのメスはそれほど速く動かないし、飛んで逃げることもない。ゴキブリは人間に見つかった瞬間にすぐ動き、タチの悪いことに退治しようとすると物陰に隠れるいやらしさも兼ね備えている。見た目については触覚が長すぎることや、脚にギザギザが多過ぎるところが嫌われているのか? と佐々木さんに聞くとこう答えた。
「見た目自体でいうと、カブトムシの方が脚はギザギザが多いし、触覚はカミキリムシや蝶もかなり長いです。全体のフォルムとして、ゴキブリと認識しているから嫌いなのではないでしょうか。私の大学時代、虫を研究する研究室だというのに、ゴキブリがイヤだと言う人もいました。何しろ『大きさに対して動きが速いのが気持ち悪い』と言ってました」
ただし、ゴキブリは100種類いるが、クチキゴキブリといって木の中で木を食べて育つゴキブリのように動かない種類もいる。さらに、沖縄にいるヒメマルゴキブリは、触るとダンゴムシのようにまるまってしまう。これはゴキブリと認識されないから嫌われない(ダンゴムシが嫌いな人は当然嫌うが)。
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