フマキラー「虫博士」が明かす“最も蚊に刺されない対策”…殺虫剤CMの知られざる苦悩とは

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 夏の風物詩というべきか、とにかく夏場を代表する迷惑な存在が「蚊」である。そんな蚊をどのように駆除すればいいのか。「虫博士」として知られるフマキラー開発本部基礎科学研究部部長代理で理学博士の佐々木智基さんに聞いた。

代々木公園から蚊が消えた

 2014年、海外渡航歴のない人が東京の代々木公園などで蚊に刺された後、デング熱に罹ったことが話題になった。最終的に都内で108人の患者が報告され、代々木公園は大規模な駆除活動を行っている。筆者はあの近くに2020年まで住んでいたが、6年間、家の中で一度も蚊を見なかった。はたして、そんなことが有り得るのだろうか。蚊の生態と絡めて、佐々木さんに尋ねてみた。

「6年ですか。その近くから蚊が消えたってことはあり得ると思いますよ。あの時に問題となったのはヒトスジシマカ、いわゆるヤブ蚊です。飛翔能力が高くなくて一晩で飛べる距離は100メートル以下。そんな蚊を駆除するため、代々木公園みたいに大きなところで、全面的に殺虫剤を散布して一帯からほとんどいなくなった。ヒトスジシマカは卵で冬を越しますが、成虫が減ったので卵も減って、当然ながら、次の年は成虫の数も減ります。薬を撒いてないところから飛んでくるのにも時間がかかります。あの後に代々木公園周辺で全然、蚊が発生しなかったというのは、色々な方から言われました。それこそ学会などで研究者や大学の先生も指摘していましたね」

オニヤンマの効果

 最近、オニヤンマのフィギュアで蚊を撃退できる、という話も耳にした。プロの目から見て、その効果について聞くと、

「我々のような殺虫剤メーカーが考えている効力レベルから考えるとどうですかね……。我々は何もしなかったら100回刺されるところを、10回以下に抑えられるくらいの商品を作ります。使用環境によりますが、弊社が規定する試験環境ですと、フィギュアはそのレベルではない。“数半分くらいには減るかな?”といったところではないでしょうか。玄関やベランダにぶら下げる“空間用虫よけプレート”みたいなものは8~9割の効果は出ると厚労省は認めています。そして、蚊取り線香は効きます。リキッドやマット、電池式、ワンプッシュなども、駆除という点ではほぼ100%の効果があります。ただし、屋外で蚊取り線香を使うと有効成分が風に流れていくので、反対の方から来た蚊に刺されることはあります」

「当社でも“ヤブ蚊バリア”という商品があり、バリアを作って蚊を避けることができます。蚊を寄せ付けたくないベランダや地面、藪に噴霧することで効果を得られます。あとは“ヤブ蚊フマキラーダブルジェット”という商品を使うと、蚊の幼虫であるボウフラを退治できます」

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