【どうする家康】存在感のない家康、所作も作法も軽んじられ…岩盤支持層に不人気な原因は多数あった
家康に好意を抱くのは難しい?
家康自身が魅力に欠けるという問題もある。30話では幼なじみで、恩義のあるお市(北川景子・36)を見殺しにした。信長の妹だ。お市が再婚した柴田勝家(吉原光夫・44)と秀吉が戦いになった際、援軍を送らなかった。
「様子を見る」(家康)
結果、柴田は追い詰められ、自刃。お市も自刃した。お市はその際、こう言い残した。
「一度ならずとも二度までも(前夫は浅井長政=大貫勇輔・34)男だけを死なせ、生き恥さらすと、地獄にいる兄に笑われようぞ」
お市らしい潔さだった。また、死を覚悟したお市に向かって長女・茶々(白鳥玉季・13)は「母の未練は茶々が晴らします。茶々が天下を獲ります」と約束。覚悟を感じさせた。母娘に魅せられた。一方、苦渋の選択だったとはいえ、家康は冷たかった。
26話では武田方の岡部元信(田中美央・49)勢が降伏したものの、家康はこれを受け入れず、無慈悲にも皆殺しにした。こんなエピソードを相次いで観せられたら、家康に好意を抱くのは難しい。
家康が正室・瀨名のことを繰り返し思い出しつつ、3人目の側室・於愛(広瀬アリス・28)とベタベタするのもしっくりこない。当時の価値観だと普通のことなのだろうが、この作品は1人目の側室・お葉(北香那・25)を同性愛者と思しき女性という設定にしたり、家康の子供を宿した侍女・お万(松井玲奈・32)に女性の政治参画の必要性を訴えさせたり、女性の権利や立場については現代の価値観も採り入れている。それなのに一夫多妻のような部分を昔のままにするというのは、2重基準で分かりにくい。
広瀬が演じる於愛はコメディエンヌらしいものの、あまり笑えない。登場したのは23話からだが、26話では榊原康政(杉野遥亮・27)を叱責。家康が信長をもてなし、それについて康政が不満を漏らしたためで、於愛は「そのようなことを言うではない!」と声を荒らげた。さらに「そなたに殿のお気持ちが分かるのか!」と説教した。
於愛は側室である上、のちの徳川幕府2代将軍・秀忠と尾張清洲藩主・松平忠吉の母だから、偉いのだろう。とはいえ、物語に登場して間もない人物が、家康にずっと仕えてきた側近を叱り飛ばすと、観る側としては違和感が拭えない。
今後、家康の存在感が高まり、支持も高まるのか。