応募わずかで“写真コンテスト”が大ピンチ…実は、「医者いじめ」で大炎上した村のイベントだった

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なぜ初期消火に失敗したのか

 ネット炎上事件は大抵、年月を経れば忘れられてしまうのだが、上小阿仁村だけは違う。未だに医師いじめのイメージで語られ続けている稀有な例なのだ。困ったことに、小阿仁村に関しては全国ニュースになるような話題に乏しい。したがって、炎上のイメージに上書きができていないのが、ここまで引きずっている原因であろう。

 上小阿仁村は、村からオリンピックのメダリストやノーベル賞受賞者が出なければ、イメージを好転させるのは難しいのではないだろうか。とにかく明るい話題を作ることが急務である。

 さらに困ったことに、高齢化率が極めて高い上小阿仁村の村民はほとんどネットニュースなど見ないだろうから、そんなイメージで語られているなど露ほども知らないと思われる。筆者がデイリー新潮の記事に書いたように、秋田県はテレビによって文化が形成されている。テレビで報じられない限り、県民は問題を問題として認識しないのだ。

 今年発生した大規模な水害でも、秋田県の自治体は満足に避難指示を出すことができなかった。秋田県はとにかく、行政レベルで見てもITスキルが著しく低い。ましてや、数年前の上小阿仁村では、ほとんどネットに詳しい人がいなかったのではないか。当時の関係者は医者いじめの事件を「村の問題」という認識でほとんどろくに対応せず、初期消火に大失敗した。ネット対応を軽視したことが、当時の負の遺産をいまだに引きずる要因になっているのである。

現在、上小阿仁村はどうなっているのか

 筆者は上小阿仁村のイメージを少しでも好転させたいと思っている。宣伝記事を書いてくれと言われたら書く覚悟もあるが、いかんせん、行政関係者にコネクションはないのがネックだ。

 そこで、隣町の北秋田市出身で、上小阿仁村に車で5分で行ける場所に住む20代のS氏に電話して、秋田県や上小阿仁村の魅力をどう考えているのか聞いてみた。

「上小阿仁村は友人もいてよく遊びに行っているので。悪い印象はないですね。秋田県全体にいえることだと思いますが、何もないのが一番いいんじゃないでしょうか(笑)。上小阿仁村には村を移動する自動運転サービスがありますよね。利便性が高いんですよ。村民の一人暮らしの人にも、しっかりきめ細やかな対応していて、いい村だと思いますよ」

 医者の事件を、若い世代はどのように考えているのだろうか。

「自分も、外の人たちと会うと真っ先にその話が出てきてしまいますね。昔は村八分という言葉があったので、そういうこともあったのでしょうね。ただ、今は若い世代も増えてきているので、あまり他人に干渉しなくなっているとは思います。それは良いのか悪いのか、わかりませんが……-。なので、住民トラブルのような話はあまり聞きませんね」

 筆者は上小阿仁村を何度も訪れたことがあるし、この写真展の企画自体には賛同できる。どうか、この夏、この記事で少しでも興味を持たれた方は上小阿仁村を訪れて、村のありのままの姿をその目で確かめて欲しい。今回のコンテストの締切は8月20日なので、もう間に合わないかもしれない。しかし、まだ次回があるかもしれない。そのときに向けて写真を撮影し、コンテストにどしどし応募して欲しいと思う。

山内貴範(やまうち・たかのり)
1985年、秋田県出身。「サライ」「ムー」など幅広い媒体で、建築、歴史、地方創生、科学技術などの取材・編集を行う。大学在学中に手掛けた秋田県羽後町のJAうご「美少女イラストあきたこまち」などの町おこし企画が大ヒットし、NHK「クローズアップ現代」ほか様々な番組で紹介された。商品開発やイベントの企画も多数手がけている。

デイリー新潮編集部

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