応募わずかで“写真コンテスト”が大ピンチ…実は、「医者いじめ」で大炎上した村のイベントだった
田舎でイベントはどう開催するべき?
筆者は同じ秋田県の羽後町で「かがり美少女イラストコンテスト」という、地元の西馬音内盆踊りをテーマにした女の子のイラストを募集するコンテストを、平成19年(2007)から不定期にこれまで8回開催している。このコンテストには、毎回100作品以上の応募がある。賞金も基本的にないのだが、香港など海外からも作品が寄せられたほどだ。
これは応募条件がイラストなので、西馬音内盆通りをさっぱり知らない、はじめて聞いたという人でも、ネットで検索して絵を描けばいいため、手軽に応募できるのだ。羽後町も上小阿仁村同様に鉄道が通っておらず交通の便の悪さは折り紙付きだが、現地を訪れなければいけない写真よりもハードルが低い。
また、私の個人的な縁で、声優アイドルユニット「i☆Ris」の茜屋日海夏氏や久保田未夢氏、イラストレーターの樋上いたる氏などいろいろな人に審査員として参加してもらい、賞品がほぼ出ない名誉賞ながら、審査員賞も出している。行政の補助金をもらっていないイベントだが、それなりの趣向を凝らしているため、支持は集めている。
上小阿仁村の写真コンテストは、最優秀賞が「農泊『奥秋田百笑』高橋旅館お食事付き1泊2日ペアご招待」が1名、優秀賞が「村内飲食店お食事券+上小阿仁村健康セット」が2名など、かなり豪華である。にもかかわらず応募が来ない状況では、広報体制などを含め、抜本的に改善する必要があるだろう。交通の便が芳しくない田舎でイベントをやる上では、主催者の熱意と広報活動が欠かせないのである。
ネット炎上をいまだに引きずっている
話を上小阿仁村に戻そう。県外の人が上小阿仁村を訪れる上で最大の壁になっているのが、交通事情以上に、悲劇的なレベルのイメージの悪さである。なにしろ、Yahoo!で「上小阿仁村」で検索すると、「悪の村」「医師」などの関連ワードがいまだに出てくるのだ。これは確実に、村の観光にとってマイナスになっており、観光協会がもっとも対策を講じなければならない急務である。
当時を知らない人のために解説すると、上小阿仁村の事件は、ローカルニュース関連ではネット界隈がとんでもなく沸騰した空前絶後の事件であった。実は筆者が取材の際に「秋田県出身です」と言うと、「あ~、秋田県って、あの医者を追い出す村があるところでしょ?」と言われた経験が2度ほどあるし、ネットニュース編集者の中川淳一郎氏と酒を飲んだ時も、私の出身地が秋田県と聞いて中川氏が連想したもののひとつが上小阿仁村であった。
ネットニュースの発展をリアルタイムで見てきた中川氏が、秋田県の印象的だった事件として挙げるのが、男鹿市の伝統行事の「なまはげ」が変態行為を働いた「エロなまはげ、女湯覗く」事件であった。破廉恥な行為であるが、これはネット上で笑いも起こっていたと記憶している。
ところが、上小阿仁村の事件は、秋田県のイメージを壊滅的に悪化させた深刻なニュースだったと思う。秋田県の自殺率が全国トップレベルに高い理由などとも紐づけられ、様々な観点から論争が巻き起こった。当時の2ちゃんねらーやネット住民は、いまだに印象に残っている人が多いのではないだろうか。
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