応募わずかで“写真コンテスト”が大ピンチ…実は、「医者いじめ」で大炎上した村のイベントだった

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あの上小阿仁村の写真展の応募が低調

 秋田県上小阿仁村で開催されている写真コンテストの応募が低調であると、地元のローカル紙「秋田魁新報」が報じた。なんと、魁新報が報じた8月3日時点で、わずか1点しか作品が集まっていなかったという。8月15日、筆者はコンテストを主催する上小阿仁村観光協会に電話で問い合わせたところ、窓口の女性は、集計している部署が異なるため点数はわからないとのだった。さすがに1点からは増加していると思いたい。

 上小阿仁村は秋田県の中央部、静かな山間にある村だ。マタギで有名で、林業などで栄えた村だが、人口減少が加速度的に進んでいる。今年、人口はついに2,000人を割ったが、これは県内の自治体で最少だ。

 筆者は上小阿仁村を訪れたことは何度かあるが、長閑な風景が広がるいい村である。しかし、ネットでは今回の写真コンテストのニュースが報じられると、「またあの村か」「いったい誰が応募するんだ」といった塩梅でざわついた。そう、上小阿仁村は平成19年(2007)以降、村唯一の医療機関「上小阿仁村国保診療所」に医者が定着せず、何度も何度も入れ替わる“医者いじめの村”として有名になった、あの村なのである。

 この事件は村の関係者側にも言い分があり、単純な構図ではない。しかし、「村民が医師をいじめている」という一部ニュースの報道に尾ひれがついて、爆発的に広まってしまった。そして、上小阿仁村関連のニュースが報じられるたびにネットがざわつくようになったというわけである。

写真展の開催は結構難しい

 写真コンテストの応募が低調な件を、医者いじめと関連付けて考察するネット民がいた。しかし、そもそも公募形式の写真コンテストは、簡単なようでいて開催が難しいのである。確かに、募集の告知さえ出せば開催できるため、自治体や観光協会主催の写真コンテストは多い。展示会場も町の公民館などを格安で借りられるし、誰でも開催できるというイメージが持たれやすい。

 しかし写真コンテストは作品が集まらないと格好がつかないため、まずは広報体制をしっかり整えなければいけないのだ。多くの場合は地元の風景がテーマになるため、応募するには写真家が現地に行って撮影をしなければいけない。したがって、観光地としての知名度が低く、交通の便が悪い場所には不利なのである。ましてや、人口が少ない山村で開催するのは至難の業であり、相当な努力をしなければならないだろう。

 静岡県沼津市にある「つじ写真館」が開催している写真コンテストは既に7回を数え、個人の写真館の開催にもかかわらず、毎回多数の応募がある。8月13日に行われた表彰式を筆者は取材したが、なんと全国から216点もの作品が寄せられていた。応募のためには沼津を訪れて写真を撮影し、しかもつじ写真館でプリントをしなければいけないため、意外にハードルは高いが、それでも作品が集まっているのだ。

 沼津は首都圏からアクセスしやすく、アニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』の聖地として知名度が高いが、それだけでは作品が集まらないだろう。つじ写真館の店主の峯知美さんはSNSを定期的に更新し、店を訪れるファンと積極的に交流を図り、フレンドリーな性格も愛されている。峯さんのこうした活動が、多くの応募者に支持される要因になっているのだ。

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