「大谷の“リアル二刀流”には反発の声も多かった」マドン前監督インタビュー 制限を解除した“至ってシンプルな理由”とは?

スポーツ 野球

  • ブックマーク

「前例にないことを始める時には拒絶反応が」

 20年、大谷は本塁打7本、投手としても登板わずか2試合に終わっている。

「何か前例にないことを始める時には拒絶反応があり、認めたくない人はいろいろ言うものだ。“やってみたらどうだ”と心から背中を押してくれる人なんて一握りで、はるかに多くの人は“無理だ、やめておけ”と言う。翔平の耳にもそれは届いたかもしれないね」

 制限を外した21年、大谷は46本塁打、9勝をマークし、MVPに輝いた。その後の活躍は周知の通り。周囲の雑音を結果でねじ伏せた格好である。

「否定的だった人たちが今、翔平に対して賛辞を送ったり、あの時の決断は正しかったなんて言っているのを聞くと複雑だけど、評価はすべて彼が勝ち得たものだし、今後も続けてほしい」

 この活躍によって22年、メジャーでは先発投手が降板後もDHとして試合に出続けることを認める、いわゆる「大谷ルール」ができた。これで登板日もフル出場が可能になり、「リアル二刀流」が完成したのである。

「あんなに才能を持った選手は見たことがない」

 制限を解除し、大谷の覚醒をもたらしたマドン。大胆な決断の背景にはこんな哲学があるという。

「私はすべてのことにアスリートの考えが優先されるべきだと思っている。それにあんなに才能を持った選手は見たことがない。口を出して制限をかけてしまうことを恐れたんだ。しかも翔平の場合は前例がないことだろ。一体、誰がベートーベンやミケランジェロに“こうした方がいい”なんてアドバイスできる? 翔平にしか二刀流のことはわからないのに“こうしろ”なんて言えないだろ?」

 今後はアーロン・ジャッジの持つア・リーグ記録62本塁打の更新が注目される。

「トラウトが故障で欠場しているから勝負を避けられる。その点はマイナスだ。セリーヌ・ディオンの曲であるだろ。That's The Way It Is。『それが現実さ』。でもそれは多くの強打者が通ってきた道だ。どんな投手にもコントロールミスはある。それを見逃さずに打てば、必ずチャンスはあるさ」

 シーズン終了まで2カ月。最後に残るのは、どんな数字だろうか。

週刊新潮 2023年8月17・24日号掲載

ワイド特集「一瞬の夏 永遠の夏」より

前へ 1 2 次へ

[2/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。