「大谷の“リアル二刀流”には反発の声も多かった」マドン前監督インタビュー 制限を解除した“至ってシンプルな理由”とは?
本塁打王争いでトップを独走。キャリアハイのシーズンを過ごしている大谷翔平(29)。躍進のきっかけを作ったといわれるのが、昨夏までエンゼルスの指揮を執っていたマドン前監督である。「リアル二刀流」を解禁した恩師が、愛弟子「覚醒の瞬間」を語った。
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「今シーズンは、これまで以上に喜怒哀楽がはっきりと出ているね。ダグアウトでもチームメートとじゃれ合ったり、バットボーイにビンタを要求したり、そうした姿を見ることが多くなった。自信も生まれているだろうし、チームの居心地が良いんだろう」
そう語るジョー・マドン(69)。本誌(「週刊新潮」)の依頼に応じ、米在住のスポーツライター・丹羽政善氏によるインタビューに答えた。
前監督にとって、先のWBCでの大谷の姿は、これまでとは明らかに異なっていたという。
「最後にマイク・トラウトを三振にとって雄叫びを上げた時、翔平がすべての時間をベースボールに注ぎ込むのは何のためか、その答えを教えてもらったような気がする。これまでも“とにかく勝ちたい”と事あるごとに話していたが、あの表情にそれが出ていたよ。自分がエンゼルスの監督をしている時にあんな姿を見たかったが……」
“それが現実さ”
マドンは、大谷が渡米した2年後の2020年、エンゼルスの監督に就任した。前任の監督たちは大谷を、日本時代と同様に登板日の前後1日は休養させ、マウンドに立つ日は打者としての起用を見送っていた。投打の負担が大きいゆえの“配慮”であるが、マドンは21年、登板前後も打者としての出場を認め、登板日もDHを解除して打席に立たせた。投打ともに出場の「リアル二刀流」を解禁したわけである。
「私が考えたのは、翔平は日本でも何度かそれ(=リアル二刀流)をやっていた。だからこっちでもやろう、と。シンプルな話だ。聞けば翔平もやってみたいと言う。話は早かった」
が、周囲の反対は強かったという。
「元監督やコーチ、OBたちからは“大丈夫か?”との声が上がったよ。チーム内でも“自由にやらせたい”と提案した時、みなサポートを約束してくれたが、内心はそうではなかっただろう。前年の翔平の成績があまりよくなかったからね」
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