ジェンダーレストイレ問題はタイでも… 「外ではできるだけ尿意を我慢する」レディボーイたちの本音
世間を騒がせた東京・新宿の「東急歌舞伎町タワー」のジェンダーレストイレは、この8月に廃止され、男女別のトイレへと改修された。“炎上”を呼んだこのトイレだが、世界的にLGBTQに寛容な印象のあるタイでも試行錯誤状態のようだ。
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昨年、バンコクにオープンしたThe Fig Lobbyというホテルの1階にはジェンダーレストイレがある。オーナーのティンポトングさん(30)はその経緯をこう話す。
「このホテルは築34年の古い建物をリノベーションしたアート愛好家のためのホテル。宿泊客の90%は外国人です。LGBTQのお客様もいます。欧米ではそういう人たちが安全に使えるジェンダーレストイレがあるため、うちもとり入れることにしました」
タイ人客のなかには戸惑った人もいたようだが、欧米からの客には抵抗感がまったくないようだ。
日本でもその設置をめぐって話題になったジェンダーレストイレだが、タイも同様にその数は少ない。ざっと調べると、タイ商工会議所大学、タマサート大学、マヒドン大学、チェンマイの職業訓練校などの学校にある程度。一般的な公共のトイレではほとんど見かけない。
この実情に多くの日本人は首を捻るはずだ。タイには多くのLGBTQがいる印象がある。ゲイや、タイ語でガトゥーイと呼ばれるいわゆるレディボーイの方、男装だが女性らしいしぐさの人、女装する男性が、日常に馴染むように暮らしている。筆者はバンコクに暮らしたことがあるから、その実感は強い。
「数」ではなく「寛容」のおかげ?
バンコクに住みはじめたとき、ベッドのシーツを縫ってくれたのも、同じアパートに住むガトゥーイだった。食堂に入ればガトゥーイの店員によく出会う。銀行に行けば窓口にいるのはガトゥーイ。5月に総選挙が行われたが、それまで国会の下院には4人のガトゥーイ議員がいた。毎年、パタヤでは国際ニューハーフ美人コンテストが行われる。2009年には、はるな愛が優勝している。タイは性転換手術のメッカでもある。各国のエージェントがオフィスを構えている。もちろん日本のエージェントもある。
こうした状況を踏まえれば、街にはもっと多くのジェンダーレストイレがあっていい気がする。
数字で算出しにくい分野かもしれないが、タイのLGBTQの割合は約8%といわれる。約500万人だ。日本は8%から10%というのが通説で、欧米では10%を超えるというデータもある。となればタイがとりわけ多いわけではない。しかしタイはほかの国に比べLGBTQは多い気がする。
ゲイの日本人でタイの宝石店で働いているNさん(60)はこういう。
「タイの社会はそれだけLGBTQに寛容だってことです。彼らは普通に社会のなかで働いている。女装も厭わないし、会社も彼らを採用する。だから目立つんです。日本はそうはいかない。私がタイに移住した理由もそれです」
知人のタイ人Pさん(49)はこんな話をしてくれた。彼は中部タイのナコンサワンで育った。
「小学校のクラスは男子生徒が20人ほどいましたが、4、5年になると、女性っぽくなっていく友だちがふたりいました。家に遊びにいくと、お姉さんのスカートを穿いていましたから。タイ人はそういう環境で育つんです。いつも近くにはLGBTQがいました」
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