【消費税還付詐欺】2000万円を騙し取った中国人飲食店経営者の正体 特殊詐欺グループとの関係も

国内 社会

  • ブックマーク

美談の主

 1回目は成功した。A社は消費税約2000万円の還付を求めると、全額が振り込まれた。これに味を占め、2回目は消費税約1500万円の還付を求めたが、これは保留となった。

 さて、この消費税詐欺を企んだA社だが、法人登記によると代表の名前はB氏。このB氏、“美談の主”として話題になったことがある。

 B氏は都内などで複数の飲食店を経営しているのだが、その中に九州地方の中華料理店がある。コロナ禍で生活困窮者を対象に弁当の無料配付を行い、話題を集めたのだ。

「B氏が経営する飲食サービス業の公式サイトには、10を超える居酒屋や中華料理店の店名が記載されています。店名が全て違うので一見するとチェーン店には見えませんが、どの店舗もB氏が運営する会社が手がける飲食店です」(同・捜査関係者)

 B氏は日本で成功を収めたと言っていい人物だ。そんな彼が、社会的に問題のある貴金属店と組んで消費税詐欺を企んだ。しかも捜査関係者は「貴金属店が特殊詐欺で手に入れた被害金を、今回の消費税還付詐欺事件に使った可能性がある」と指摘する。

「特殊詐欺グループが集めた被害金は貴金属店にプールされました。その被害金の一部は、この消費税還付詐欺に悪用するためビットフライヤーの購入資金に回された可能性があるのです。つまり、B氏は特殊詐欺の被害金を消費税還付詐欺でマネーロンダリング(不正資金洗浄)しようとしたとも考えられるのです」

氷山の一角

 B氏に取材を申し込むと、「該当する会社はもう存在しないため、取材には応じかねます」と、担当者を通じて電話で回答があった。

 結局、この消費税還付を狙った詐欺事件は、芝税務署の調査で不正が明らかになった。2022年12月、芝税務署は1回目の請求で還付した消費税約2000万円の返金を求め、約700万円の重加算税を課した。保留されていた2回目の還付請求約1500万円にも約500万円の重加算税を課した。

 悪事は露見し、これで一件落着と思われたが、国税に詳しい関係者は「これで終わらせるわけにはいきません」と憤る。

「これほど悪質な詐欺事件ですから、重加算税だけでなく詐欺罪としての刑事事件化が求められます。特殊詐欺グループを摘発した大阪府警は、消費税詐欺についての情報も全て把握しています。しかし、動きは鈍いと言わざるを得ません」

 今回の詐欺事件だけでなく、日本で会社を経営する外国籍の経営者で、架空の輸出をでっち上げた消費税不正還付に手を染める者は相当数いるという。警察庁や国税庁による厳しい捜査・調査が求められるのは言うまでもない。

デイリー新潮編集部

前へ 1 2 3 次へ

[3/3ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。