【消費税還付詐欺】2000万円を騙し取った中国人飲食店経営者の正体 特殊詐欺グループとの関係も

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偽装輸出の実態

 商事会社の社長は「A社からの注文はYAHOO!メールで送られてきた」と説明したが、芝税務署が調べたところ、そうしたメールは一切見つからなかった。

 最終的に、商事会社に化粧品を納入していたことになっていた会社が架空取引を認めた。ポイントを列挙すると以下のようになる。

◆商事会社宛の請求書は取引実態のない架空請求だった。

◆化粧品を仕入れたことにして、銀行口座に振り込まれたお金を商事会社が指定した女性に手数料を差し引いた上で手渡した。

◆2021年5月ごろから架空の請求書を作り始め、10回ほどやった。

 捜査関係者は「A社はベトナムに化粧品を輸出していると偽装し、消費税を不正に還付させようと企んだのです」と明かす。

「貿易会社がベトナムへの輸出計画を申請していました。ごく小額の取引は行っていたらしく、この輸出計画で税務署を騙そうと考えたのでしょう。A社は化粧品を架空発注しましたが、代金は現金で商事会社に払いました。商事会社は架空の請求書を作っていた会社に現金を支払いました。その会社が、都内の貴金属店に現金を流したのです」

仮想通貨も悪用

 この貴金属店は“曰く付き”の会社と言っていい。昨年、読売テレビや産経新聞などが、特殊詐欺事件の“基地”として家宅捜索されたと報じている。

 2022年6月22日、大阪府警は中国籍の2人の男を詐欺の疑いで逮捕した。警察官を名乗って「所持金が偽札の可能性がある」などという嘘の説明を信じ込ませ、2人の高齢者から現金8200万円を詐取したという容疑だった。

 さらに府警は、貴金属店の役員も逮捕。この役員も中国籍だったが、同年7月に日本に帰化。詐欺グループが騙し取った現金を貴金属店に集め、中国への送金などを担当していた。府警は同年9月の時点で10人以上を逮捕し、被害額は少なくとも1億円以上にのぼると見ている。

「彼はA社が支払った現金を受け取ると、仮想通貨を購入。ベトナムで販売した化粧品の代金は仮想通貨で支払われたと偽装したのです。その後、仮想通貨は日本円に換金され、最終的にはA社がベトナムで稼いだ売上として偽装計上されました。要するにA社が支払った化粧品の仕入代金をぐるっと一周させれば、税務署から消費税を還付させられると考えたわけです」(同・捜査関係者)

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