「闇バイト」が狙う“金がありそうな家の名簿”はどうやって作られているのか【元暴力団の証言】

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テレビのアンケートを騙り…

 この元暴の話の通り、名簿の種類は、豊富にあります。かつて特殊詐欺実行犯だったフナイム氏は、現代ビジネスの取材に対して次のように語っています。

「訪問販売の購入者、貴金属などの高額商品の購入者、健康食品の購入者などさまざまな名簿が販売されています。名簿には、名前、住所、電話番号、生年月日、さらに家族構成まで書かれたものもあるんです。特に私たちのグループはリフォーム申込者の名簿をよく使っていました。いつ頃、どれくらいの金額をかけてどんな工事を行ない、現金払いなのか、ローンだったのか、そういった細かいことまで記載されているものもあったんです」「さらに、過去に電話でアンケートに答えたことがある人は特に注意を払ったほうがいい」と言います。

「資産の状況を聞き出すのは簡単です。例えば『~~テレビです。池上彰さんの「~~」という番組ですが、ご覧になったことはありますか? アンケート調査に協力してもらえませんか』と電話で切り出して、『老後二〇〇〇万円問題が話題ですが、備えはできていますか?』『タンス貯金は三〇〇万円以上ありますか?』など次々にイエス、ノーで答えられる質問をしていきます。最後に、『当番組は夜~時に放送しています。お一人で観られますか、ご家族と一緒に観られますか』と聞くんです」(「現代ビジネス」二〇二三年二月二七日)。

 どこまでも狡猾で油断のならない詐欺グループの探りに、我々はなお一層の注意を払う必要があります。

 政府も、このような個人情報の不正提供を取り締まるべく、取り組みを強化しました。朝日新聞の報道によりますと、犯罪対策閣僚会議では、「特殊詐欺グループは、資産状況がわかるものなど各種の名簿をもとに被害者宅にだましの電話をかけることが多い。このため、名簿の流出を防ぐ対策を強化。名簿を扱う業者が利用者の本人確認を行っているかなどを調査し、個人情報保護法に基づいた適正な運用を推進する。グループに名簿を提供する悪質な『名簿屋』や個人情報を不正に入手、提供する者の取り締まりも進める」として、対策の強化を明言しています(「朝日新聞デジタル」二〇二三年三月一七日)。

廣末登
1970年、福岡市生まれ。社会学者、博士(学術)。専門は犯罪社会学。龍谷大学犯罪学研究センター嘱託研究員、久留米大学非常勤講師(社会病理学)、法務省・保護司。2001年北九州市立大学法学部卒業、08年同大学大学院社会システム研究科地域社会研究科博士後期課程修了。国会議員政策担当秘書、熊本大学イノベーション推進機構助教、福岡県更生保護就労支援事業所長等を経て、現職。裏社会の実態を科学的調査法に基づいた取材を重ね、一次情報をもとに解説する。著書に『ヤクザになる理由』『だからヤクザを辞められない』(ともに新潮新書)、『ヤクザと介護』『テキヤの掟』(ともに角川新書)等がある。

デイリー新潮編集部

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