「闇バイト」が狙う“金がありそうな家の名簿”はどうやって作られているのか【元暴力団の証言】
名簿から臓器まで取引される裏社会のメルカリ
二〇一三年、アメリカのFBIに潰された“シルクロード”というウェブ闇市がありました。いわゆるダークウェブの草分け的存在です。カネの出先が分からないビットコインは、こういうところで使われる。裏のメルカリみたいなものです。
当時のダークウェブは、英語版しかなかったのですが、現在では日本語版のサイトも存在します。シルクロードは薬物専門でしたが、昨今のダークウェブは、名簿、銃器、シャブ、殺人請負い、児童ポルノ、キャッシュカードから臓器まで、何でも売られています。もちろん、闇の名簿なども手に入ります。
もっとも、違法サイトですから、商品が届かなくても被害届は出されないので、詐欺も横行しています。日本は税関が厳しいので銃などは注文できないから、大麻の種子などが人気のようです。
だから、今回の事件で使用された名簿が、どこで入手されたかということは、首謀者らが当局によって尋問されないと分かりません。要は、名簿の入手先は複数存在するということです。
筆者が保護司会の役員を務める地域(福岡市中央区)でも、マンションの郵便受けが荒らされているという苦情が上がっていると聞きました。オートロックの高級マンションでも、郵便受けは無防備であることを忘れてはいけません。個人の住所や家族構成がカネになる時代です。郵便物といえども個人情報が記載されていますから、これまで以上に注意が必要です。
余談ですが、二〇二三年の統一地方選では、選挙事務所関係者が「地方議員の運動員がお願いしても有権者が個人情報を書いてくれないので、名簿がつくれない。ルフィ事件は余計なことをしてくれた」と、嘆いていました。筆者の議員秘書時代の経験に照らしても、選挙事務所には多くの人間が出入りしますから、有権者の個人情報は誰にでもアクセスできます。市民の心配は至極真っ当な反応といえます。
こうした事態に直面して、議員選立候補者はいささかやり難いかもしれませんが、市民の体感治安が悪化し、名簿をはじめとする個人情報の管理に神経質になることは、闇バイトの被害に遭わないための防衛策として、良い傾向であると考えます。
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