「歴代組長連続墓参」を実現させた司忍組長と井上組長らとの違いは 「親分たちの夏」を読み解く

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サプライズと受け止めた

 そんな状況の下、今回、司6代目は田岡3代目の墓参の後に、渡辺芳則5代目の墓所も訪れたとされる。司6代目は渡辺5代目体制を若頭補佐として支えた1人だが、同時に引導を渡したのもまた6代目だというのは定説となっている。

 2004年、抗争事件中に傘下組員が警官を誤射殺した件で遺族から損害賠償を求められた渡辺5代目は、最高裁で自身の使用者責任が認定されたことで長期休養を宣言。翌2005年に引退するのだが、その進言をしたのが当時、若頭に就いていた司6代目とされているのだ。

 竹垣悟氏(元山口組系義竜会会長で、現在はNPO法人「五仁會」を主宰)は、

「死去や暗殺によって当代ではなくなった3代目や4代目と違って“生前退位”を司6代目に勧められたわけですから、5代目と6代目の関係は複雑だというのが定説とされてきました。それだけに、今回の墓参をサプライズと受け止めた関係者はそれなりにいることでしょう」

 としたうえで、こう続ける。

「対照的に、井上組長が渡辺5代目のお墓参りをしたとの話は目下、聞こえてこないですね」

渡辺5代目との極めて近い間柄

 井上組長は渡辺5代目が創設した健竜会の4代目であり、5代目発足から主流派を占めた山健組でも渡辺5代目は2代目で、井上組長は4代目を襲名している。司6代目に引けを取らないどころか、ずっと深い間柄と言えるだろう。

「2015年8月に神戸山口組を作った頃は、“自分たちこそ真正の山口組だ”と主張していました。そういったスタンスに加えて渡辺5代目との極めて近い間柄を踏まえれば、井上組長も田岡3代目や渡辺5代目、場合によっては竹中正久4代目のお墓参りをしても何ら不思議ではないはずですが、実現しなかったようですね」(同)

 そして、井上組長のみならず、神戸山口組と2社連合を組む池田組の池田組長や、池田組と運命共同体とされる絆會の織田代表らもまた山口組歴代組長を墓参したとの情報は聞こえてこないという。

 これには前述の事情が関係している可能性は否定できない。つまりボディガードを十分に配置できないことを考慮し、安全保障の観点から井上組長らが墓参を断念したということだ。

慶弔の儀式は義理事

 それに加えて竹垣氏は、組織内の力学の影響も指摘したうえで、対照的な双方の振る舞いにはそれぞれの現状が透けて見えると語る。

「井上組長が4代目をつとめた山健組は5代目の中田浩司組長体制となったのち、神戸山口組側から6代目側へ移籍しました。これについては、渡辺5代目の未亡人・道子姐さんも中田組長の行動を支持しているとの話があります。井上組長が仮に参りたくてもそれが許されない状況にあるのかもしれません。

 しかし、冠婚葬祭、あるいは慶弔の儀式は義理事とされ、業界ではとても大事なことと考えられています。だから何の支障もなければ、もちろん井上組長らも墓参したことでしょう。それができなかったことに、6代目側と神戸山口組側の勢いの違いが反映されていると指摘する声もあります」(同)

 たいていの人たちにとって穏やかに故人を偲ぶための行事も、ある種のアピールの場となってしまう業界ということなのだろう。

デイリー新潮編集部

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