「歴代組長連続墓参」を実現させた司忍組長と井上組長らとの違いは 「親分たちの夏」を読み解く

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竹内若頭補佐の運転で

 6代目山口組の司忍組長が3代目山口組の田岡一雄組長の命日にあたって、兵庫県神戸市内の霊園を訪れたのは去る7月23日のこと。霊園の所在地は暴力団対策法に基づく警戒区域に指定されているため、暴力団員たちの活動が大幅に制限されていることから、司組長はガード用の車両を伴うこともなく現地を訪問したという。一方で、対立する神戸山口組の井上邦雄組長や絆會の織田絆誠代表、そして池田組の池田孝志組長の墓参情報は聞こえてこなかったという。ここから現在の双方の状況が読み取れるようだ――。

 今年の命日当日、司6代目はガードの車両をつけることなく、若頭補佐で3代目弘道会の竹内照明会長の運転するクルマで現場にやってきたという。

 霊園のある神戸市内では今年4月、弘道会の直参で湊興業の余嶋学組長が、経営するラーメン店内で射殺されている。犯人は捕まっていないが、神戸山口組など敵対組織による犯行の可能性が極めて高い。

ボディガード問題

 他方、昨年から神戸山口組側への攻撃も目立つ。井上組長宅への17発もの銃撃、絆會の織田代表宅への車両特攻、神戸直参の2代目西脇組事務所へのトラック特攻など――これらが同じ神戸市内で相次いでいるのだ。

 要は今、神戸市は双方の対立が顕在化しているホットゾーンと化しているといえるだろう。

 一方で、神戸市は暴力団対策法に基づく警戒区域に指定されている。5人以上の組員が集まれば、それだけで身柄を拘束される可能性があるのだ。従って、組長といえどもボディガードを十分につけることもままならない。司6代目の墓参にガートの車両が存在しなかったのもそのためだ。

 身の危険を一番に考えれば、司6代目が墓参を自重しても不思議ではなかったはずだ。それでも墓参を決行したことをどう読めばいいか。

墓参も自由にできなくなっていた

 その絵解きの前に、ここで少しだけこの数年の墓参事情に触れておこう。

 2005年に司組長が6代目山口組を継承した後、田岡3代目の命日墓参は当然、重要行事となっていた。が、様々な事情に配慮する必要が出てきたことで、2017年には山口組の「組碑」を総本部内に移し、その後は総本部で命日を偲ぶことになった。

 しかし、2020年に6代目山口組は暴力団対策法に基づく「特定抗争指定暴力団」に指定される。これにより、総本部を含めた拠点が警戒区域として使用禁止となり、組碑の前での供養も不可能となった。また、前述の通り、警戒区域内では大勢のボディガードを引き連れての行動は困難。そのため、6代目の直参の中から代表者1人が墓参することになった。

 大勢で動けば警察に目をつけられる。かといって少人数で動けば敵対組織の攻撃を防げない。

 本来、市民にとっての脅威となるわけでもない墓参といった行為ですら気の向くままに、とはいかない状況が数年前から続いていたことになる。

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