甲子園史上“最も壮絶な打撃戦”、智弁和歌山が13対12で帝京にサヨナラ勝ち…帝京時代の「杉谷拳士」「中村晃」も熱く燃えた!

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「このままみすみす試合を落とすわけにいかない」

 先頭打者は7回途中からリリーフしたエース右腕・大田阿斗里(元横浜)だったが、打撃は期待できない。「このままみすみす試合を落とすわけにいかない」と最後に一矢でも報いたい前田監督は、ベンチ前で円陣を組んだとき、大田に代打を送っていいか、ナインに相談した。

 選手たちは賛同し、野口直哉主将が、前年秋に主軸を打っていた背番号15の沼田隼を「行けよ」と指名した。指揮官、選手が一体となって「ともに戦う」気持ちになった瞬間でもあった。

 その沼田は三ゴロに倒れたが、打順がトップに回ると、今も語り継がれる帝京の“歴史的猛攻”が幕を開ける。

 安打と死球でチャンスをつくると、2死後、4番・中村晃(現・ソフトバンク)の二ゴロがイレギュラーして右前に抜ける幸運なタイムリーを口火に4連打で3点を返し、なおも満塁のチャンスで、1年生ながらショートのレギュラーに抜擢された杉谷拳士(元日本ハム)に打順が回ってきた。

「打てなかったら、来年、再来年はないからな!」と前田監督から強烈な檄を飛ばされた杉谷は、「高校最初の夏で野球人生を終えたくない」一心で左前に2点タイムリーを放ち、ついに9対8と逆転した。

 さらに打者一巡してこの回2打席目の沼田が「悔しくて、やってやるという気持ちだった」と、前打席で打ち取られた雪辱をはたす左越え3ラン。帝京は敗北寸前から一転、12対8と4点リードを奪った。

 だが、このまますんなり終わるとは思えなかった。

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