コメンテーター・長嶋一茂の空気を読まない生き方 時折見せる真逆の一面に嫌われない原因

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自分の弱みもバラすから嫌われない

 とはいえ、他人の不幸やピンチにコメントするばかりでは反感を買う。一茂は自分のグレイゾーンやピンチだった過去も隠さない。

 韓国の朴槿恵大統領(当時)をめぐる政治スキャンダルが発覚した2018年、11月18日に放送された「羽鳥慎一モーニングショー」でのこと。スキャンダルに絡む実業家の娘には大学の裏口入学疑惑があり、高校3年生の時に計17日しか登校していないというエピソードが紹介されると、一茂は「俺と似てる」とつぶやいた。さらに求められてもいないのに語り始めた。

「俺ね、(大学)1年の時、学校2回しか行ったことない」(一茂)

 この発言にMCの羽鳥慎一アナ(52)と周囲は慌てた。一方、当の一茂はどこ吹く風。ちなみに立大は4年で卒業している。どういうマジックが使われたのかは不明だが、野球部員だったのが大きいのではないか。一茂は本当に自虐ネタが好きだ。

 TBS「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」(金曜午後8時57分)の2018年5月25日放送回では、30歳だった1996年にパニック障害を発症していたことを明かした。

「呼吸ができなくなっちゃうような感覚にとらわれる」(一茂)

 さらに12年後の2008年にはうつ状態に陥り、死を望む自分自身の声が聞こえたという。

 一茂にとっての1996年というと、父親の長嶋茂雄氏が監督だった巨人軍で2軍にいた時期。2008年は俳優としての評価が固まらず、タレントとしてもブレイクに至っていなかった時期だった。それらが影響したのかも知れない。

 いずれにせよ、育ちのいい一茂にも苦難の時期があった。それにより、人に優しくなり、高橋茂雄らにキツいことを言っても嫌らしく聞こえないのではないか。一茂は高橋らが傷つきそうなことを口にしない。

 一茂は長嶋茂雄氏の野球の才能を、全ては受け継がなかったのかも知れない。しかし、人に愛されるDNAは継承した。

高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)
放送コラムニスト、ジャーナリスト。大学時代は放送局の学生AD。1990年のスポーツニッポン新聞社入社後は放送記者クラブに所属し、文化社会部記者と同専門委員として放送界のニュース全般やドラマレビュー、各局関係者や出演者のインタビューを書く。2010年の退社後は毎日新聞出版社「サンデー毎日」の編集次長などを務め、2019年に独立。

デイリー新潮編集部

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