人違いで“ターゲットの父親”を刺殺…宮城「闇バイト」殺人事件の世にも奇妙な人間模様

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“被害男性の息子”に下された実刑判決

 だが、岩見はその後もAを“懲らしめ”ようとしていた。事件後も「殺人依頼」「復讐」といったワードでSNS検索し、別のアカウントに同様の依頼をしている。「最初は半信半疑でしたが、1回目(毛利さん事件)で、そういうことをする人が本当にいると分かったんで」と、今度は本気だったようだが、2020年10月末以降は「連絡しても返って来なくなった」ことから、闇バイト探しは諦めていたようだ。

 全く無関係でありながら、突然、殺害された毛利さんについて岩見は「いやー正直、申し訳ない気持ちでいっぱい」と、謝罪の言葉を口にしている。そして、強い恨みを抱いていたAに対する気持ちにも変化があったようだ。

「正直、Aも実刑くらったんで、自分の気持ちも少し鎮まったというか。何で最初から刑事告訴しなかったのかなと思った」

 逮捕後にAを刑事告訴した結果、Aは逮捕され、岩見の件を含む複数の詐欺事件で実刑判決を受けている。実行犯、森受刑者にはすでに懲役19年が確定した。岩見は一審で懲役19年が言い渡され、これを不服として控訴。高裁で控訴棄却となったが、現在、上告中である。そして、森受刑者と岩見を繋いだ“仲介者X”にも事件の責任はあるはずだが、いまに至るも、どこの誰かすら、分からないままだ。

高橋ユキ(たかはし・ゆき)
ノンフィクションライター。福岡県出身。2006年『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』でデビュー。裁判傍聴を中心に事件記事を執筆。著書に『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』『木嶋佳苗劇場』(共著)、『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』、『逃げるが勝ち 脱走犯たちの告白』など。

デイリー新潮編集部

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