人違いで“ターゲットの父親”を刺殺…宮城「闇バイト」殺人事件の世にも奇妙な人間模様

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<報酬は500万円で即金>

 岩見が言うにはこの殺人の報酬は500万円、後払いだったという。岩見はAの特徴や住所などを伝え、その後、Xが森受刑者を手配し、事件は起きた。実行犯の森受刑者には借金があり、闇バイトで仕事を探していたのだった。Aでなく、その父の毛利さんが殺害されるという人違いが起きたのは、森受刑者や岩見の証言によれば、なぜかコトを急いだ「闇バイトのリーダー」が原因だったようだ。

 森受刑者は2020年の春、フィリピンを旅行していた。当初は1週間の予定だったが、新型コロナによる入国制限で滞在が長引き、生活費などで約130万円の借金を抱えて同年夏に帰国。金策のために「裏仕事」などでネット検索し、複数のアカウントとコンタクトを取る中、Xからこんな“案件”を提示された。

<宮城で金をだまし取って返さないやつがいる。金を出した人から懲らしめたいと依頼があった。報酬は500万円で即金>

 これに飛びついた森受刑者は、レンタカーで宮城へと向かった。Xからは毛利さんの息子・Aの身体的特徴などがテレグラムを介して送られてきており、途中までは岩見の依頼が森受刑者に正しく伝わっていたことが窺える。しかし、直前になって、「玄関から出てきたやつの腹を刺してほしい」と指示が変わったのだという。襲撃後の森受刑者が、襲った人物は人違いである旨をXに伝えると、Xとは連絡が取れなくなり、500万円の報酬も払われないまま、逮捕された。

「めんどくさいから家族皆殺しにする」

 岩見も法廷で、仲介者Xの突然の心変わりがあったと語っている。

「事件直前の19時ごろ、テレグラムで通信した時にXが『Aが帰ってこないから、家族皆殺しにする』と言い出した。敷地内に車が停まってないとも聞いたので、Aが帰宅していないと伝えたが、Xは『めんどくさいから家族皆殺しにする』。話が違うと言うと、その後、連絡が途切れた」

 次に、Xから岩見のもとにコンタクトがあったのは事件後だった。<払ってもらわないと困る>とXから言われた岩見は「頼んだ人じゃないから払わない、と返事した。あくまでもAを懲らしめるのが自分の目的。お父さんは頼んでないんで」と、仲介者への支払いを拒んだ。たびたびテレグラムで着信があったが、無視し続けると、Xからの連絡はなくなったという。

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