大谷翔平、イチロー、村上宗隆…「夏の甲子園」で“後の大スター”に勝った選手列伝
大谷から放った決勝タイムリー
夏の甲子園大会には、現在NPBやMLBで活躍中の選手や現役時代に大記録をつくったレジェンドたちも多く出場している。そして、高校球児時代に夏の甲子園の大舞台で、彼らに「勝った」男たちがいる。【久保田龍雄/ライター】
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花巻東時代の大谷翔平(現・エンゼルス)から決勝タイムリーを放ったのが、帝京・松本剛(現・日本ハム)である。
2011年、2年ぶりに夏の甲子園に出場した帝京は、1回戦で花巻東と対戦した。くしくも両チームは3月に練習試合が組まれていたが、東日本大震災によって中止になっていた。
帝京・前田三夫監督は「大谷君の球は打てないと思う」と大会屈指の剛腕に警戒を深めたが、左太ももを痛めていた大谷は、県大会でも1試合の登板にとどまり、満足に投げられる状態ではなかった。佐々木洋監督も「大谷には秋も来年も将来もある」と大事をとり、県大会で“代役エース”を務めた小原大樹を先発させた。
だが、小原が帝京打線につかまり、4回に4点目を失うと、背に腹は代えられず、「投げられないときはすぐに言う」の条件で大谷をマウンドに送り出した。
「速いけど打てないことはない」
なおも1死一、三塁で打席に入った4番・松本は「初球は自信のある直球で来る」と確信し、外寄りの148キロを狙い打ち。5点目となる右犠飛を記録した。
しかし、3点を追う花巻東もその裏、3長短打で同点に追いつき、再び2点をリードされた6回にも、大谷のあわや本塁打という左越え2点タイムリーで追いつく粘りを見せる。
そして、7対7の7回、帝京は2死二塁から3番・伊藤拓郎(元・DeNA)が「何としても松本に回そう」と執念の振り逃げで出塁し、一、三塁。大谷との対戦を前に、マウンドから約10メートルの距離で速球対策の特訓を重ねてきた松本は「速いけど打てないことはない」と自信を持ってカウント1-2からの4球目、外角低め146キロを右前に勝ち越しタイムリー。大谷から3打席目に放った初安打で8対7の勝利を手にした。
一方、最後まで「降板」のサインを出すことなく、最速150キロも計測し、9回まで投げ抜いた大谷は「打たれても仲間が取り返してくれたのが、うれしかった。(被災地の郷里に)勝利を届けたかったが、力が足りなかった」と涙にくれた。
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