そろそろ「妻か不倫相手か」を選ばなければ…61歳夫が語った“なかなか決断できない本当の理由”【不倫の恋で苦しむ男たち】

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「妻か彼女か」を選ばなければ

 昨年、彼は亜樹さんの子どもたちに会った。「私の幼なじみ」と紹介してくれたのだが、19歳で産んだ息子は一流企業のエリートサラリーマンに、22歳のときの娘は医療系の仕事をしていた。ふたりとも驚くほどフレンドリーで、楽しい時間だった。

「子どもたちは彼女を『亜樹ちゃん』と呼んでいる。育ててもらったというより、僕らは勝手に育ちましたって笑ってた。なんともいえないいい関係なんですよね。亜樹は亜樹なりに、子どもたちを必死に育てたんだと思う。反発したこともあったけど、亜樹ちゃんに逆らってもいいことはないとふたりは笑うんです。誰にとっても、亜樹には逆らえない魅力があるんだろうなと納得しました」

 そして還暦を過ぎた今、拓憲さんは「妻か彼女か」を選ばなければいけないのではないかと思うようになってきた。彼自身は、籍などどうでもいいと思っている。どちらかと暮らすのか、あるいは誰とも暮らさず、行き来するような生活のほうがいいのか。亜樹さんに聞いたら、「好きなようにすれば? 私は拓ちゃんに会えればそれでいい」と言った。

「どうやら妻は、僕に誰かがいるのはわかっているみたいです。でも何も言い出さない。ふたりの女性に甘えたままでいいのか……。どこかで結論を出すべきではないのか。30年以上に及ぶ夫婦の歴史をあっさり終えてしまうのはどうなんだろうと思うし、子どもたちの反応も気になるし」

 なにより彼自身に「離婚を言い出す勇気」が出ないのだという。そのあたりも見越して、妻はいつか彼が戻ってくると思っているのかもしれない。揉めたくないだけかもしれない。妻の本音を探りたいが、彼もこの年で揉めるのは避けたい思いも強い。

「僕には財産と呼べるほどのものはないし、由利も亜樹も、別に僕のお金など目当てにはしてないと思う。でもすべてを明らかにするのが怖いんですよ」

 何もかも俎上に乗せて、さあどうすると言ったとき、「ふたりの女性が、別にどうでもいいわ」という可能性もなきにしもあらず、本当はそれがいちばん怖いのかもしれないと彼は本音を漏らした。

 この関係、由利さんが鍵になるのではないだろうか。彼女がこの先、夫と暮らしていくつもりがあるのかどうか。すべてを知ったとき、泣き崩れるタイプではないだろうと彼は言う。妻が別居に踏み切るのか、あるいは離婚を迫るのか、予測がつかないそうだ。

「夫婦なんて、案外、お互いのことがわかっていないということが、最近、よくわかった」と彼は真顔で言った。

 あの夏の日、帰省して亜樹さんに出会ったことが果たしてよかったのかどうか。30年の夫婦の歴史と、再会からは4年しかたっていないが幼なじみとの情熱とを そもそも天秤にかけていいものかどうか。そこも拓憲さんの悩みどころとなっているようだ。

前編:妻は大病を患った後、「もうお母さん業を辞める」と宣言 戸惑う61歳夫にも微妙な心境の変化が【不倫の恋で苦しむ男たち】

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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