そろそろ「妻か不倫相手か」を選ばなければ…61歳夫が語った“なかなか決断できない本当の理由”【不倫の恋で苦しむ男たち】
亜樹さんと結ばれて…
だが亜樹さんに対しては、まるきり向き合い方が違った。徹頭徹尾、「女」としてしか見られなかった。そして翌日の夜、彼は親戚の車を借りて彼女とドライブをし、そのままホテルへ行った。
「妻とは長年、レスでしたから不安だったけど、亜樹がうまく誘導してくれました。なんて言うんだろう、男と女でよかったという大きな喜びがわいてきた。それまで味わったことのない満足感があったし、亜樹と離れていた時間が一気に埋まったような気がした」
ことが終わったあと、亜樹さんは彼の肩に頭を乗せて「こんなことってあるのね。昔の拓ちゃんが見えたよ」と言った。まさに彼が言いたいことだった。「オレにも昔の亜樹が見えた。でも今の亜樹のほうがいい」と伝えると、亜樹さんが泣いた。
「びっくりしましたよ、今でも世の中をなめて生きているような亜樹が泣くなんて。亜樹自身も驚いていた。『血も涙も飲み込んで生きてきたのになあ』と泣き笑いしていた」
あとから知ったことだが、そのときの亜樹さんも決して幸せではなかったという。年下の夫とうまくいっておらず、夫は店から帰宅しないことも多々あった。
「亜樹は僕の自宅から実家とは別の方向に2時間ほど行ったところに住んでいました。帰京してから、その町を訪ねていったんです。店には行かなかったけど、昼間、亜樹と会いました。会えばやはり近づきたい、抱き合いたいという思いが強くなった。その日は話をしただけで帰ったんですが、亜樹から『したかった』とメッセージが来て、思わず体も心も反応してしまいました」
さらに距離は接近し…
いい年をした大人なのだから、分別ある行動をとらなくてはいけないと思いながら自分を止めることができなかった。月に1度ほど、ふたりは中間地点で会うようになった。そして1年もたたないうちに、亜樹さんは「離婚した」と言って上京してきた。
「もともとうまくいってなかったから、あなたは気にしなくていい。私が自由になりたかっただけと亜樹は言っていました。貯金もあるし、仕事を探して生きていくわって。言葉通り、すぐに飲食店で働き始めた。小さな定食屋だったけど、彼女が店に来てからお客さんが増えたようです。どこか人を惹きつけるものがあるんでしょうね」
そうなってからは彼は頻繁に亜樹さんが借りたアパートに通うようになった。亜樹さんは何も要求しなかったが、彼はいつか何らかの結論を出さなければいけないと覚悟を決めた。コロナ禍で飲食店での仕事ができなくなったときは、若干の生活費を渡したこともある。亜樹さんは素直に受け取った。
「だけど笑ったのは、その後、彼女がお金を返してきたんですよ。いいよと言ったら、『大丈夫、競馬で当てたから』って。たくましいですよね。彼女の生活力というかたくましさを、僕は本当にすごいと思っています」
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