京都で隣人から「うちの前に車を停めてもええで」と言われても絶対に停めてはダメな理由 地元の不動産会社が教える「古都」のホンネと建て前

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何よりも大事な近隣へのあいさつ

 なんとも気を遣うやり取りの連続……。移住希望者だけでなく、京都で建築や改築に携わる畑さんの会社も地元でのコミュニケーションにこそ神経を使うのだという。

「東京の人が京都の町家を買って、うちの会社がリノベーションを請け負った場合、工事前には私たちも近所へのあいさつ回りをします。その際、我々が“京都の会社”だと説明すると安心してもらえる。それは京都人のホンネを理解しているからです」

 畑さんは、京都への移住を希望する人には地元に通じた不動産業者と関係を築くことを勧める。それも、京都生まれ京都育ちの担当者が望ましいそうだ。

「できれば物件探しもネットではなく、地場の不動産屋に相談するのがいいですね。担当者には、京都人が何よりも重視する近隣への“あいさつ”にも付き合ってもらう。最初のやり取りに失敗すると、その後もずっと気まずい状態を引きずってしまいます。一方、京都育ちの担当者が同行すると、咄嗟の反応や受け答えに京都人らしさが滲み出るので、相手も心を開きやすいんです」

警察に通報されることも

 それに加えて、“ホンネ”を汲み取ることも重要だ。

「たとえば、建築工事の資材を積んだトラックの停車場所を探している時に、隣家の人から“うちの前に停めてもらってもええで”と言われたとします。しかし、絶対に停めてはいけません。この言葉を額面通りに受け取ると“常識がない”と判断されてしまう。それどころか、警察に通報されることもあります。そうした言葉は社交辞令と受け流し、とにかく近隣に迷惑をかけないように配慮すると、“さすが京都の業者さんやわ”と言われるようになるんです」

 ここまでの話を聞くと、軽い気持ちで京都への“移住”を口にするのは許されないと思えてくる。だが、畑さんは次のように語るのだ。

「京都人は、観光客や移住者を含めて外から人が入ってくることを嫌がっているわけではないんです。むしろ、本心では外の人と喋りたいし、仲よくしたいと考えている人が多いと思います。ただ、“角が立たないようにコミュニケーションを取ること”を京都人がとても大事にしているという点は理解してほしい。移住してすぐに受け入れてもらおうとするのではなく、まずはほどよい距離感で生活してみる。その積み重ねによって周囲が徐々に警戒心を解いていけば、“地蔵盆”など地元の行事に招かれるようになるはずです。それに、最初は大変かもしれませんが、京都に移住したのをきっかけに日常生活の中で細やかな気配りを身につけてしまえば、その後のビジネスシーンなどにもきっと活かせると思いますよ。おススメです」

 なるほど、結論として京都への移住はおススメということらしい。いずれにしても、長い歴史のある街で受け入れてもらうには、それなりに時間をかけるべきということか。

「そうですね。3代くらい住み続けたらかなり警戒心も解けると思います(笑)」

 京都、おそるべしである。

デイリー新潮編集部

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