「真夏のシンデレラ」 湘南住まいのヒロインを田舎者扱い…ツッコミどころ満載はワザとなのか
奇跡の出会い
「森がサップ(スタンドアップパドルボード)の展示会に行くため上京するのですが、いきなり降り立ったのが東京駅。しかも、丸の内口の駅前で道に迷っていました」
修学旅行で初めて東京に来た高校生じゃあるまいし。
「彼女が住む湘南は十分に通勤圏内ですからね。そこまで田舎者扱いすることはないでしょう。展示会が都内のどこで行われたのかは不明ですが、彼女が昼食におにぎりを食べていたのが豊洲であることから湾岸方面だと思われます。ならば、わざわざ東京駅で降りる必要もないでしょう」
その豊洲で森は、スマホをなくしたことに気づく。
「まずは公衆電話を探して自分のスマホに電話するか、この日に落ち合う約束をしていた間宮に連絡を取るべきですが、彼女は自分の足跡を辿ります。東京駅に戻り、展示会場、豊洲、有明を探すも見つからない。途方に暮れて辿り着いたのが竹芝でした。そこで彼女の名を叫ぶ間宮と出会う、という考えられない展開でした。広い東京でそんなことはあり得ないでしょう」
森のスマホに電話した間宮がスマホの拾い主と話すシーンはあったから、その後、取り戻したと想像はできるのだが、その辺りは一切描かれない。
「間宮は、森が東京に慣れていないから、落とした場所からそんなに離れていないと思って竹芝に来たと言っていました。豊洲から有明、竹芝といえば、直線距離なら遠くはありませんが、臨海線ゆりかもめをほぼ乗り切るほどの距離です。どうやって移動したのか、東京に慣れていないとは思えぬ行動範囲です」
さらに、大問題が発覚すると……。
もはや伝説のドラマ
「高校生の大西が恋人を妊娠させたことが判明し、彼女の両親が怒鳴り込んできます。相手の父親からは『育て方を間違えたんじゃないか』、母親からは『(母親代わりの森が)甘やかしただけじゃないの』とまで言われて、森が最敬礼で謝罪。それでも『男が女のことをちゃんと考えてくれなかったからこんなことになった』と攻めたてられて、二人で土下座までするハメに。湘南は今もまだ昭和だったのか、と思ったほど」
SNSには《妊娠は双方合意の上でそういうことしたら、両方に責任あるんだよ》といった令和世代の声が溢れたが、
「土下座の直後、良心に耐えきれなくなった大西の恋人が、『実は二股掛けていて違う相手の子』だったという涙の告白には、ヒロインならずとも茫然となりました。この後、両家がどう話をつけたのかは全く描かれることなく、森と間宮が海岸を散歩するシーンに切り替わりました。妊娠騒動で絆が強まったのか、間宮が森に告白するという展開には、もはや感想すらありません」
SNSでは《土下座返せ》《育て方を間違えたのはどっちよ》など当然と思える声が並んだのだが、ひょっとして、これらは全て、再生数を稼ぐための新手の手法かも……。
「さすがにそれはないでしょう。演出はフジの『医龍』シリーズや『コンフィデンスマンJP』などを手がけた田中亮、プロデューサーは『ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~』や『わたしのお嫁くん』の中野利幸です。ウケ狙いで作るのなら、もっと上手く作るでしょう。問題は脚本だと思います。フジは『silent』で、新人の生方美久を脚本に起用して大成功を収めました。柳の下のドジョウを狙ったのか、『真夏のシンデレラ』の脚本も生方と同様、“フジテレビヤングシナリオ大賞”を受賞した市東さやかを抜擢しました。彼女一人に責任を負わせるのは酷かもしれませんが、兵庫生まれ鹿児島育ちですから、関東の地理や感覚には疎いのかもしれません。また神戸大医学部卒で看護師をしながら大学院を修了したという経歴の持ち主ですから、チャラい集団での恋愛経験などあったかどうか。想像だけで書いているので、東京で普通に暮らしている若者には疑問符の連続になったのだろうと思います」
ドラマは今後、どうなってしまうのだろう。
「ともあれ、悪名は無名に勝るとも言います。ドラマ史に残る伝説の作品となる可能性は高いでしょう」
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