ライバル意識がエスカレートした結果… 漫画家のやまもとりえが「この子になりたい」と思ったほどの「天才少女」との出会いと別れ
「休み時間くらいクラスの子たちと遊んだら?」
中学生になり、私たちは別々のクラスになったが、校舎も離れてるというのにA子ちゃんは休み時間のたび私に会いにきた。
「ははーん、さてはこの子クラスに友達おらんのやな」少し申し訳なさそうな彼女の顔を見ていたら、ずっと隠していた意地悪な私が顔を出した。
「休み時間くらいクラスの子たちと遊んだら?」
傷つけようと思って放った言葉が、相手にヒットしてしまった時のあの感覚、A子ちゃんの表情、私は一生忘れられないだろう。それ以来彼女が私に会いにくることはなかった。
謝る機会を失ったまま時間は過ぎ、私たちは中学を卒業。彼女とはそれから一度も会っていない。「次に会えたらなんて話しかけよう」そんな事をいつも考えていた。
一度だけ、県の美術展でA子ちゃんの絵を見かけた。彼女の名前の横には「入賞」の貼紙。私は「入選」。
また勝てなかった。なのにうれしかった。「あの子はまだ描いている」なんだかそれだけで十分だった。
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