ライバル意識がエスカレートした結果… 漫画家のやまもとりえが「この子になりたい」と思ったほどの「天才少女」との出会いと別れ

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小学校3年生で出会った「天才」

『うちらはマブダチ』『わたしが誰だかわかりましたか?』などの人気作で知られる漫画家でイラストレーターのやまもとりえさん。子育てをしながら製作に励む彼女が今の道を歩む原点となった、幼き日のある出会いとは。

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「りえちゃんの絵は色がとても奇麗ね」

 幼稚園生の時、先生に言われた言葉だ。

 その日以来「私ったら絵がうまい子なんだわ」と思うようになった。おめでたい子である。

 A子ちゃんと出会ったのは小学校3年生。

 写生大会で多くの生徒が、お碗をひっくり返したような曲線に緑一色で山を描く中、A子ちゃんは少し違っていた。緑、黄、青、紫……輪郭線は曖昧で、ところどころ山が空に溶けているようで、私にはそれが「光を描いている」ように見えた。

「天才や……」

 ビリジアンを出しすぎて余ってる自分のパレットが恥ずかしくなった。

友情とはまた別の感情が

 私たちはすぐ仲良くなった。

 二人で並んでお絵描きをする時間は何よりも楽しかった。お題を出しあい、時間内に描いて見せあう。それだけなのに、脳内に幸福物質がバシャバシャ出てくる感覚があった。

 私が少女漫画をまねた絵を、A子ちゃんに負けじと必死こいて描いているその隣で、A子ちゃんは力の抜けたシンプルな線画をサラサラと描いていた。その絵が私にはとてもオシャレに見え、いつからか彼女のまねをするようになっていた。

 冬休み明けに小学校で「年賀状コンクール」が開催されることになった。

 みんなで投票して大賞を決めるというごくごく内輪の催しだが、私はこれに冬休みの全てを捧げた。「ぜってーA子ちゃんに勝つぞ」それしか考えてなかった。何枚も何枚も描いてその中から一番いいと思うものを提出。

 結果は、A子ちゃんが大賞。私は2位でもなく3位。

 こんなに頑張ってもサラリとその上をいくA子ちゃん。大賞を取っても特に喜んでないA子ちゃん。悔しかった。私もA子ちゃんになりたいと思った。友情とはまた別の感情が出てきたのはこの頃からだった。

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