「朝食抜き、甘い朝食はNG」「アボカドは記憶力にも効くスーパーフード」 スタンフォード式「本当の疲労対策」をプロが伝授
「疲労の原因は脳にある」
先ほど説明したように、疲れとは筋肉だけでなく神経のコンディションによって引き起こされるものであるというのが現在のスポーツ医学の見解です。実際、疲労を感じている人の多くは、体のオンとオフを切り替える自律神経と、手足を動かす際などに体の各部位に指示を出し司令塔の役割を担う中枢神経の、ふたつの神経のコンディションが悪化しています。これが、私が疲労の原因は脳にあると考えるゆえんです。
この神経のコンディションの悪化はさまざまな「歪み」、すなわちバランスの崩れによってもたらされます。体の歪み、食事や睡眠時間のバランスの崩壊、そしてメンタルの歪み……。これらによって、神経のコンディションが悪化し、うまく体のオンとオフが切り替えられなくなったり、また手足に的確に信号を送ることができなくなり、私たちは疲れを感じるのです。
こうした疲労のメカニズムを理解すると、疲れには神経のコンディション悪化という原因があるわけですから、その悪化を防げれば疲労も予防できることになります。
風邪をひいてから薬を飲んで治すのではなく、風邪をひかないように手洗いやうがいを徹底する。あるいは、虫歯になってから治療を受けるのではなく、虫歯になる前に歯みがきをしっかりと行う。これと同じで、疲れないように神経のコンディションを整えておく「疲労予防」が重要なのです。予防することが同時に、仮に神経のバランスが崩れても極度に疲れず早く元の状態に戻れる「疲労回復」にもつながります。
それでは、具体的にはどのような疲労対策があるのでしょうか。実際、スタンフォード大学でアスリートたちに実践指導しているメソッドを紹介したいと思います。
記憶力などが大きく向上
まずは食事です。栄養のバランスが崩れると内臓に負担が掛かり、臓器から脳への神経を通じた信号の伝達、またそれを受けて脳から臓器への指令の伝達が滞り、疲労につながるわけですが、例えば私自身は疲労対策として、アメリカでの生活では毎朝アボカドを食べるようにしています。理由は次の通りです。
脳細胞は主に脂質で形成されているのですが、良質な脂質が豊富なアボカドは週に数回食べるだけで血流が良くなると同時に、その良質な脂質によって神経細胞同士が柔軟につながり、神経伝達がスムーズになるといわれています。事実、アメリカのある大学の研究では、中くらいの大きさのアボカドを6カ月間食べ続けた人は、空間的作業記憶力や問題解決能力が大きく向上したと報告されています。
また、アボカドに含まれる脂質は、オレイン酸やリノール酸といった不飽和脂肪酸で、悪玉コレステロールの値を減らし、動脈硬化を防ぐ性質があります。
さらに、アボカドに含まれる栄養成分は体内の余分な塩分を排泄し、血圧を下げて脳や心臓の病気の予防が期待できたり、細胞の酸化を防いで血行を良くしたり、血管壁を丈夫に保つ働きもあり、脳だけでなく心臓の健康も促進する万能なスーパーフードなのです。
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