米国はリモワ普及で商業用不動産市場が低迷…オフィスビルの価値が110兆円減少との衝撃的試算も

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商業不動産の焦げ付きが経済に与える悪影響

 需要の低迷はオフィスビルの価値の低下に直結する。

 米マッキンゼー・グローバル・インスティチュートは7月13日、「リモートワークの普及により、世界主要都市のオフィスビルの価値は2030年までに8000億ドル(約110兆6500億円)減少する可能性がある」とする衝撃的なレポートを発表した。

 金利上昇も災いして、商業用不動産ローンの不良債権化が進んでいる。

 米国の商業用不動産ローンの不良債権残高は6月末で718億ドルと、4四半期連続で増加したが、深刻な問題が顕在化するのはこれからだとされている。今後5年間で返済満期を迎えるローンが2兆7500億ドル(約390兆円)に及ぶことから、不良債権残高の急拡大が確実視されているからだ。

 商業用不動産ローン債権の約5割を保有するのは中堅と中小の銀行だ。米格付け大手のムーディーズは8月7日、商業用不動産ローンをリスク要因とみなし、中小の米銀10行の格付けを引き下げた。今後、米銀の大量倒産が起きる可能性は排除できないだろう。

 筆者は「商業不動産の焦げ付きが経済に与える悪影響は米国よりも欧州や中国の方が大きいのではないか」と懸念している。

 リーマンショックのような金融危機は起きないかもしれないが、世界の主要国が軒並み深刻な資産デフレに陥り、バブル崩壊後の日本のような長期不況につながる可能性があると言わざるを得ない。

 残念ながら、今年秋以降の世界経済は厳しい局面を迎えてしまうのではないだろうか。

藤和彦
経済産業研究所コンサルティングフェロー。経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官)。

デイリー新潮編集部

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