「夏の甲子園」で勝敗を分けた“疑惑の判定”…世間を騒がせた「誤審騒動」を振り返る!

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流れを変えた“ワンバウンド判定”

 さらに翌日に行われた1回戦、佐久長聖対旭川大も、“疑惑の判定”がきっかけで、大きく明暗を分けた。

 1点を追う佐久長聖は8回2死無走者、2番・上田勇斗がレフトへライナー性の打球を放った。持丸泰輝が執念のスライディングキャッチを試み、地面すれすれで好捕したように見えた。

 だが、持丸がグラブを掲げて直接捕球をアピールしたにもかかわらず、三塁塁審の判定は「ワンバウンド!」。そして、この判定が、「これでスリーアウトチェンジ!」と信じて疑わなかった旭川大ナインの心理に微妙な影響を及ぼす。

 エース・沼田翔平は次打者に四球を許し、2死一、二塁。さらに4番・西藤慶人の左飛を、先ほど好プレーを見せた持丸が、“ワンバウンド判定”に対して気持ちの整理がつかなかったのか、グラブに当てて、まさかの落球……。3対4と逆転を許してしまう。

 それでも、旭川大は9回に中筋大介の左越え二塁打で追いつく粘りを見せたが、タイブレークとなった延長14回の末、4対5で無念の初戦敗退。8回の判定について、ネット上で「試合を決めた誤審」の声も出たが、この試合が「史上初のタイブレーク」として有名になった分、やや印象が薄れている感もある。

「まだプレーが続いているぞ!」

 試合の大勢はすでに決まっていたが、前出の慶応とは逆に“空タッチでセーフ判定”があと味の悪さを残したのが、2016年の2回戦、明徳義塾対境である。

 8回に1点を追加し、6対2リードを広げた明徳は、なおも1死二、三塁、代打・寺西大樹の遊ゴロで、三塁走者・西村舜が飛び出してしまう。

 三本間に挟まれ、ボールを持った捕手・浜智也に追いかけられた西村は慌てて三塁に戻ったが、すでに二塁走者・西浦颯大がベース上にいたため、三塁手の渡辺仁は西浦、西村の順に相次いでタッチ。このようなケースでは、西村に専有権があるため、三塁塁審は西浦にアウトを宣告した。

 ここまでは問題がなかったのだが、直後、「自分がアウトになった」と思い込んだ西村がベンチに引き揚げようと塁を離れたことから、話がおかしくなる。

 渡辺は再び西村にタッチし、スリーアウトチェンジと思われたが、三塁塁審は「空タッチ」と判断して、アウトをコールしない。2度のアピールにもかかわらず、塁審が反応しないため、渡辺は仕方なく本塁に送球したが、時すでに遅し。

「まだプレーが続いているぞ!」というベンチの声を聞いて本塁に目がけて走り出していた西村はそのまま回り込むようにして生還。ラッキーな7点目を挙げた。境側の抗議にもかかわらず、判定は覆らなかった。

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