超豪華「VIVANT」はドラマではなくショー、莫大な制作費を回収で“ツメの甘さ”も…辛口コラムニストが徹底分析した

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 辛口コラムニストの林操氏による恒例の夏ドラマ総括……ではなく、今回は話題の日曜劇場「VIVANT」(TBS)1本に的を絞った。

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アナ:今期の民放連続ドラマで最も話題になっているのがTBS系の日曜劇場「VIVANT」(日曜21時~)です。あのドラマの人気の秘密や作品としての評価などについて、非国民生活センター・TV主席研究員の林操さんに聞きます。林さん、よろしくお願いします。

林:人気の秘密? そんなの誰に聞いたってすぐ答えてくれるでしょ――役者ソロえてます、宣伝バッチリです、つまりはカネかけてます、さらには売る気満々です、そもそも裏番組グズグズです。以上!

アナ:いきなり、そんな、身も蓋もない……。ただ、実際にそのとおりではあるんですが。

林:日曜劇場はここ1年くらい、具体的に言えば去年7月期の「オールドルーキー」から「アトムの童」「Get Ready!」までの3作が立て続けに数字も評価も低くて、枠として低迷していました。さらに言えば、2019年あたりも「グッドワイフ」「集団左遷!!」「ノーサイド・ゲーム」「グランメゾン東京」と、記録にも記憶にも残らないドラマが続いた時期がありました。

アナ:確かに。どれも林さんが酷評したり、残念がったり、無視したりしていた作品です。

林:実はそういう間だって、裏番組が特に強かったわけでもなければ、宣伝をサボってたわけでも、ショボい役者を引っ張ってきていたわけでもなく、つまりはカネをケチっていたわけでも、商売っ気がなかったわけでもなかった。

 ただ、低迷期の前後にやって大当たりしたのはどんな作品だったかと言えば、他局の競合番組が弱かったのは当然として、さらに配役と宣伝に力を入れて、要するに予算を大きく張って、何がなんでも売ろうとした作品なんですよ。

隅から隅まで徹底した豪華さ

アナ:「下町ロケット(18年版)」や「半沢直樹(20年版)」、「天国と地獄~サイコな2人~」に「ドラゴン桜(21年版)」、「日本沈没―希望のひと―」、それに「ラストマン―全盲の捜査官―」などですね。

林:そうそう。一番よくわかるのはキャスティングで、主演だけ見ても、阿部寛に堺雅人、綾瀬はるか、小栗旬、福山雅治という豪華さだし、賞味期限切れを疑われていた福山主演の「ラストマン」では主演級の大泉洋をセットで押し出した。助演陣もそれぞれ凄くて、「下町」や「半沢」あたりはそこから火が着くような脇の役者がたくさん出たよね。

アナ:そう言われると、「VIVANT」のキャスティングの凄さ、TBSの本気度があらためてよくわかります。

林:堺がなぜか1人2役(?)で、ひとつのショットにふたり映ってたりするから、「どこを折っても堺雅人!」という金太郎飴かと思ったら、「ここを折ったら阿部寛!」「ここを折ったら松坂桃李!」という金太郎・桃太郎・浦島太郎・その他いろいろの百太郎飴状態。堺雅人阿部寛役所広司松坂桃李二宮和也小日向文世二階堂ふみ……って主演級に限っても、一息で読み上げようとすると酸欠になるくらいのラインナップだからね。脇役たちも濃く固められていて、画面の中に顔を知らない役者が出ていないシーンのほうが少ないくらい。

アナ:バルカ共和国パートで登場する富栄ドラムやバルサラハガバ・バタボルドといった馴染みの薄い出演者もいますが、それぞれに味があって印象深いですよね。

林:いや、ホント。いや、日曜劇場、あるいはTBSの新装開店記念か閉店店じまい記念かと勘違いするほど、隅から隅まで徹底した豪華さで、ギャラの一覧表を見てみたいよ、ホント。後に続く10月期の日曜劇場「下剋上球児」は、予算面でつらいんじゃないかとか、余計な同情をしちゃうくらい。

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