夏の風物詩「テキヤ」業界のいま たこ焼きは700円時代、空洞化が進む原因、キッチンカービジネスに参入するケースも 暴対法とは無縁の“スローライフ”

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みかじめ料との決別

 テキヤと暴力団とでは、そもそもの性格が違う。暴力団の源流は賭け事に纏わる「博徒」であり、テキヤは博徒ではない。個人的に賭け事に興じるテキヤもいるだろうが、それは一般人のギャンブル好きとさほど差はない。また、暴力団は文字通り暴力的不法行為をするわけだが、テキヤはそういったことをする必要がない。

 警察白書によると「博徒、的屋等組織又は集団の威力を背景に、集団的に又は常習的に暴力的不法行為を行うおそれがある組織」としてテキヤも暴力団の一部として定義されている。だが、白書が指摘するようなテキヤは本来の伝統的なものではなく、暴力団化してしまった一部の団体にしか当てはまらない。

 暴力団が運営する露天商があったり、暴利を求めて暴力団へと性格を変えたテキヤが存在するのは事実だ。しかし、そのような一部のテキヤを除いて、指定暴力団に指定されているテキヤはこの世にはいない。

 今年7月には、愛知県内のテキヤ団体で構成された愛知県東部街商協同組合が「信頼される露天商として頑張っていきたい」として、この地域を根城とする特定抗争指定暴力団・六代目山口組・十一代目平井一家に対して「習慣的に支払い続けてしまったミカジメ料の返還と決別」を宣言した。

低い逮捕リスク

 もしテキヤが暴力団なら、こういったことにはならなかっただろう。テキヤが暴力団とは違うからこそ「ミカジメ料」なのだ。もし暴力団と同じなら「上納金」や「会費」となる。また、「決別」ではなく「脱会」「離脱」「分裂」といった表現になるだろう。

 テキヤは大小含めると全国各地に150団体以上あるとされ、地域ごとに組織された組合や協会といった互助会のような組織に加盟している。ちなみに、暴力団が営む露天商や暴力団化してしまったテキヤ団体は、こういった組織には加盟できない。

 テキヤの中には、お祭りの際の屋台だけでなく、さながら人気ミュージシャンのツアーのように、全国各地のデパートや大手スーパー、商店街の催事場、イベント会場を回って、生活用品や季節物、特産品などを売り歩く人たちもいる。

 暴力団が営む一部のテキヤでは、ブランド物のコピー商品が売られたりもするそうだが、正規のテキヤは基本的には本物のみを取り扱っている。

 そもそもテキヤは、暴力団とは違って逮捕リスクが極めて低い。確かに会社員などとは異なり、いわゆる「浮き草稼業」だ。テキヤを正業と呼んでいいかとなると、いささか疑問の余地は残る。ただテキヤに正業傾向が強いのは事実だ。屋台にせよ催事場にせよ、大手企業のような莫大な売上が出るわけではないが、日銭商売としては何とか成立している。

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