「拉致対策のドン」によるヤジ騒動に批判噴出 「横田早紀江さん」対談イベントで「石川正一郎」内閣官房参与が「誘導尋問やめろ」と声を上げたワケ

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生存情報をスルー

 ヤジの前、高世氏は拉致問題が一向に進展しない要因について、これまでの政府の対応や戦略を俎上にあげて問題提起。なかでも2014年、北朝鮮側が日本政府に生存情報を伝えてきた拉致被害者2名のケースを紹介した。

「その2人とは、政府認定の拉致被害者である田中実さんと金田龍光さんです。北朝鮮側は当時、2人とも生きていて、現地で結婚もしていると明かした。田中さんに至っては、妻も日本人で、子供がいるとの情報まで開示しています。しかし日本政府は“その2人の情報だけでは不十分。国民の納得を得られない”として、北朝鮮が用意した調査報告書の受け取りを拒否したのです」(高世氏)

 これについては2年前、当時の拉致問題担当大臣だった古屋圭司氏が朝日新聞のインタビューにこう答えている。記者から、北朝鮮が田中・金田両氏の生存を非公式協議で明かしたにもかかわらず、日本政府が報告を受け取らなかったのはなぜか? と問われた際の回答だ。

<過去の教訓から、報告書を受け取れば北朝鮮のペースになるとの懸念がありました。小泉訪朝で(拉致被害者の一部にあたる)5人を帰して(問題の)幕引きを図ろうとしたからです。今回もこの2人で、となれば、同じことになると考えるのは当然です>(「朝日新聞」21年8月11日付)

 生存情報を把握しながら“見て見ぬフリ”をしたことを認めているのだ。

石川氏はどう答える

 ヤジが飛んだのはこの政府対応について、高世氏が「早紀江さん、どうでしょう?」と見解を訊ねた直後だった。

「拉致被害者の家族会のなかでも“最大のオピニオンリーダー”である早紀江さんが、仮に2人に対する政府の対応に疑問を呈し、“すぐに救出に動いたほうがいい”などと言えば大問題。政府の拉致対応の否定に繋がり、これまでの戦略や方針が瓦解しかねない危険性があった。それを察知した石川氏が機先を制しようとしたのではないかと私は疑っています。ただ真意は別にしても、拉致対策の行政部門の“ドン”と呼ばれる公人が取るべき行動でないのは言うまでもありません」(高世氏)

 ヤジに激怒したのは会場にいた者ばかりでなく、特定失踪者問題調査会代表の荒木和博氏も石川氏へ公開質問状を出すなど、騒動は広がりを見せている。

 石川氏にヤジの真意などについて訊ねると、拉致問題対策本部事務局を通じて、

「私自身、ヤジを飛ばしたとの認識はありません。もとより、みずから積極的に何らかの発言をして行事の進行を妨害したり、対談のやり取りに影響等を与える意図はまったく有しておりませんでした」

 と回答したが、反省の弁は一切見られなかった。

デイリー新潮編集部

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